中国の金融緩和策といえば、市中銀行から人民銀行が強制的に預かるおカネの比率を示す「預金準備率」引き下げが典型だ。しかし、10日の記者会見で、易綱中国人民銀行総裁は、「預金準備率の下げ余地は数年前と比べると大幅に狭まった」と語った。
もう一つの金融緩和政策である「利下げ」にも慎重だ。金利を下げれば中国からのマネー流出が再加速するリスクがある。直接的人民元安誘導策との誹りも誘発しよう。そもそも、貸出金利を下げても、景気減速が顕著な状況で、資金需要は盛り上がらない。
更に、中小企業資金調達の「シャドーバンク」依存体質にメスを入れる「構造改革」も、民間企業に強い痛みを強いる。国有企業優先で、民間企業救済は後回しとの「草の根」不満感も根強い。今、シャドーバンク規制を更に強化させれば、財務自転車操業の中国民間企業発行の社債デフォルトのリスクも高まる。
そこで、中国経済テコ入れ、起死回生の一策として、「量的緩和」導入の可能性が浮上している。金融メディアの財新でも報道され、上海株式市場では待望感も聞かれる。
対して、中国人民銀行幹部は否定している。
とはいえ、今後、中国政府のインフラ投資は増える。国債増発は不可避だ。長期金利には上昇圧力がかかる。
そもそも中国人民銀行に政治的独立性は無い。党指導部の意を受け動く優秀なテクノクラート集団だ。
易綱総裁の立場も微妙である。副総裁郭樹清氏のほうが、党委員会書記という政治的肩書で、党内序列は高いのだ。易氏は、人民銀行生え抜きで、流ちょうな英語を話すので、もっぱら外向きの顔とも言われる。
しかも、郭氏は、強い権限を持つ中国銀行保険監督管理委員会の主席も兼ねる。昨年、銀行監督の銀監会と保険監督の保監会が統合され、シャドーバンク規制強化など金融構造改革に向けての習政権の本気度を示す動きとされた。しかし、足元では、景気優先の姿勢が強まり、構造改革も号令だけが虚しく響く。
量的緩和に関する議論も、党の意向を反映した金融緩和政策の一つの選択肢として、市場内ではくすぶる。
とはいえ、米国側から見れば、人民元安政策と映りそうだ。
それゆえ、未だ不透明な米中通商協議の結果次第で、現実味を増すシナリオと考えられよう。
このシナリオは、金が買われるシナリオでもある。
人民元は刷れるが、金は刷れない!
今日の写真は「ミモザ・ケーキ」ふんわりスイーツ@自由が丘マガーリ
なお、近畿・中京・北陸・福岡地区の皆さん、明日土曜朝9時半から、ABC朝日放送系列で「正義のミカタ」生出演します。テーマは中国経済。またまた、吉本芸人相手の突っ込み突っ込まれる情報番組です。楽しんでますよ。あの時間帯で視聴率10%超えって、凄い。。。