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さて、今日の本論。

4日連続株価上昇の流れを断ったのは、やはり、米中貿易摩擦問題であった。新興国通貨危機第二波も市場のムードを冷やした。

まず、トランプ大統領が、対中2000億ドル追加関税をパブリック・コメント期間が終わる来週にも発動か、との外電観測記事が流れた。続いて、トランプ氏が外電インタビューで「その報道が全く間違っているわけではない」と否定はせず。更に、米国に対する公平な対応がなされずば「WTOから脱退するであろう」と断定的表現は避けつつ言及した。

NY市場はNAFTA交渉の新展開を一応「一歩前進」と評価して株価も上昇を継続していた。しかし、同交渉がライトバイザー通商代表部とナヴァロ補佐官主導で進展したことで、政権内強硬派が勢いを得て、対中通商交渉に臨んでいる。しかも、北朝鮮核問題に対する中国の態度にトランプ大統領が公然と不満の意を表し、米中関係も微妙な状況に置かれている。それゆえ、市場の反応も神経質にならざるを得ない。

なお、2000億ドル追加関税については、段階的実施案や、実施は遅らせる案も選択肢とされ、流動的だ。

 

そして、新興国通貨危機の「伝染」現象が顕在化した。

アルゼンチンペソが、一日で16%近く急落。同国大統領が、IMFへ、500億ドル支援を急ぐようにSOSを発信したことがキッカケとなった。同国金融当局も、緊急利上げ。政策金利水準を45%から一気に60%に引き上げた。通貨防衛のための利上げが、既に危機的な国内経済を更に圧迫。通貨安による輸入物価急騰によるインフレも悪化。通貨投機筋はペソ売り攻勢を強めるという負の連鎖を断ち切れない。

更に、暫時落ち着いたかに見られたトルコリラの下げも誘発。一日で5%ほど急落した。

FRB利上げサイクルが続く限り、新興国通貨安は避けられない。FRBは「世界の中央銀行ではない」が、実質的には「世界の中央銀行」としての影響力を持つ。

新興国通貨の範疇には人民元も含まれる。FRBの利上げが人民元安の要因となり、トランプ大統領は、中国金融当局が人民元安誘導と非難する。ジャクソンホールでの中央銀行フォーラムでは、パウエルFRB議長講演が「ハト派寄り」と解釈され、トランプ大統領の「FRB利上げ牽制発言」を無視できなかった、との見解も市場に流れた。当のパウエル議長は、金融政策運営を「天測航海」に例え、「星座を頼りのナビゲート」と語った。中央銀行金融政策の難しさを、実務家出身の感想として述べているようだ。

市場が知りたいのは、FRBが、どの星座に注目しているか、ということだろう。

米利上げ、新興国経済不安、通商摩擦問題が共振する大波に揺れ、マーケットの視界は不透明な状況が続く。

新興国経済危機は、需要の7割を新興国に依存する金市場にもジワリ、リスク要因として効く。新興国国民所得が伸び悩むと金宝飾品需要も減るという「所得効果」と、新興国通貨建ての現地金価格が上昇して、買い控えが起こるという「価格効果」の二つの面がある。1200ドル攻防が続いている。中長期的にはリーマンショック後、史上最高値1900ドル突破のバブル期を経て、今は、長期的需給均衡点を模索している段階。1200ドル水準は、その需給均衡価格といえるかも。