日本時間午前3時頃から米国市場の景色が激変した。

それまでは、パウエル氏が二回目議会証言の席で、経済過熱の可能性について前回のタカ派的表現を若干修正するような発言があり、米10年債金利が2.8%台に下落。株式市場は好感して、上昇していた。

そこに突然、ホワイトハウスから、トランプ大統領が鉄鋼25%アルミ10%の追加関税に動くとの報道が流れ、ダウ平均は10分ほどで200ドル以上急落。ボラティリティーの急騰が、売りが売りを呼ぶ連鎖を誘発した。VIXも節目の20を再び超えた。

金利が下落しているのに米国株が下がる、というこれまでとは正反対の反応だ。市場の注目点が、金融政策から通商政策にシフトした。

金融政策は金利を通じてマネーの流れに直接的に影響を与えるが、通商政策はボディーブロー的に効き、連鎖的にインパクトが拡大する。鉄・アルミだけであれば限定的だが、品目・相手国が拡大して、貿易戦争に発展する可能性で、市場がリスクオフになったのだ。

経済指標としては、ISM製造業景況感指数が60超えで2004年以来という高水準を記録した直後ゆえ、トランプ大統領のオーンゴールのごとき展開だ。通商問題を持ち出したことで、パンドラの箱を開けた感もある。

背景としてトランプ政権の内部亀裂激化も見逃せない。

同族対側近の対立だ。

ケリー大統領首席補佐官は娘婿クシュナー氏の機密情報閲覧制限に動き、トランプ氏も、もて余し気味であった。しかも、広報部長の側近女性が辞任。政権発足以来、同ポストでは4人目である。

更に、政権の経済司令塔とされるコーン国家経済委員長は生粋の自由貿易派。ただでさえ人種問題発言などでトランプ氏との確執が囁かれていたので、市場内には俄かに辞任説が広がっている。政権の「良識派」、しかもマーケット出身ということで、市場の信任は厚い人物だけに、その去就は市場変動要因になりうる。

なお、追加関税は来週発表とされるが、共和党内にも不協和音が直ちに出始めている。株式市場でも、鉄鋼株は急騰、自動車株は急落と、恩恵を受けるセクターとダメージを被るセクターの対比が鮮明だ。実現までに紆余曲折も予想される。トヨタは「米国製鉄鋼を調達している」とのコメントを出している。

総じて、この市場の景色の激変を見ていると、「下げたがっている」との印象が強い。金利上昇が強い売り要因だったはずが、金利が下がれば、まだ決定していない通商問題を売り要因に仕立ててしまう。要は、投機筋の売りの口実探しの印象が拭えない。

ボラティリティーの異常な高さに神経質になっている市場は、短期売買のヘッジファンドにとって草刈り場ともいえる。

中期的には、米国株の下げが「調整局面」なのか「トレンド転換」なのか、厳しく問われる。

一旦収まった感があった市場が再度激震に見舞われたことで、下落局面が長引くシナリオを意識せねばならない状況だ。

 

金価格は1300ドルギリギリまで売り込まれた後、株急落を受け、1310ドル台まで反騰した。

貴金属で目立ったのが、パラジウムの急落。一日で約60ドル(6%)も下がった。そろそろパラジウム・バブルも危ういね。17年11月27日の本欄原稿「有事の金とパラジウム高騰にご用心」参照。

 

 

昨晩も午前3時頃から大荒れになって、結局寝そびれた。

日中は、日経平均も500円以上下がり、円高が106円割れの局面もあった。日経平均21000円、円106円の攻防だ。

昨日は、企業IRセミナーの基調講演やったのだが、株価急落でさぞかし個人投資家も萎えているかと思いきや、会場は150人満席でムンムンの盛況。アニマル・スピリッツ全開だった。その後、近くの千疋屋でメディア取材。ついでに()、イチゴパフェ注文。上品な甘さが心地よい。

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なお、今日の日経マーケット面に、海外投資家が2月第三週(19-23日)に7週連続で売り越し。累計は6兆円で2年半ぶりの規模。対して、日本人個人投資家は買い越し。

海外投資家は高値圏で売り安値圏で買う。日本人投資家は高値圏で買い、安値圏で売る。なんとも切ない。。。

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