今回の全人代で、中国は、過去の膨大な借金の清算は先送りにして、更に借金を増やし、インフラ工事とか減税の大盤振舞いせざるを得なくなりました。李克強首相も、易綱中国人民銀行総裁も、中国にしては珍しく、国が難局にあることを認め語っています。
昨年の全人代では、過剰債務を抱えるゾンビ企業や、実態が不透明なまま膨張した影の銀行(シャドーバンク)の整理を前面に打ち出し、「構造改革」路線をアピールしました。それから1年。政策の180度大転換を強いられることになったのです。
膨らんだ借金の返済を強いれば、当然、企業破綻が急増して、工場閉鎖が相次ぎ、失業が増えます。闇の金融会社を取り締まれば、たちまち中小企業は資金繰りがつかず倒産してしまいます。
経済の理屈からいえば、銀行の不良債権は整理せねばならないし、借金返済の目途がつかない不良企業には退場してもらわねばなりません。
しかし、そこは社会主義国家の中国。
景気に赤信号がともれば、不良債権まみれの国有銀行も、借金まみれの民間企業も国により救済されるのです。
更に、経済を活性化して、失業者の一揆を未然に防ぐためには、更に借金を積み増してでも、公共工事や銀行融資を力づくで増やすのです。それが、今年の全人代での政策転換でした。
米中貿易戦争から受けたダメージも効きました。これまでトランプの関税攻撃で、中国経済を引っ張ってきた稼ぎ頭の「輸出」が激減したのです。
振り返れば、中国の経済は10%以上の高成長を続けていました。しかし、今や、世界第二の経済大国になると、そもそも年率10%の高度成長など望むべくもありません。近年は7%から6%台に減速してきました。例えていえば、高速道路を100キロ以上にぶっ飛ばして、インターから一般道路に入ると、60キロでも、車があたかも止まったかのような錯覚を感じますよね。中国の国民も、同じような減速感を味わっているのです。
今年の全人代では、2019年の目標経済成長率も6-6.5%と設定されました。昨年の「6.5%前後」という目標を下回る数字です。
これを発表する演説をした李克強首相が1時間45分もの熱弁をふるっている間、隣席の習近平国家主席は、憮然とした表情で、ときおり側近に喋りかけたりしていたことが話題になっています。
「ばらまき型の景気刺激は断固やらない」
李克強首相は断言しましたが、結局、発表された景気浮揚策は「ばらまき」でした。
借金まみれ地方政府には、もっと資金調達してインフラ工事増やせるように、地方債の発行枠を6割増の大盤振る舞い。
不良債権をかかえる大手国有銀行には、中小企業向け融資を30%増やす大盤振舞い。
そして、企業減税のおまけつき。
さすがに、李克強首相も、このときは「財政赤字圧力が高まる」と開き直って認めざるを得ませんでした。
しかしながら、市中におカネをばらまいても、企業が将来への視界不良から設備投資を控えると、経済成長を生む企業融資にはなりません。挙句の果てには、その過剰マネーが不動産市場や株式市場に流入してバブルを生む結果にもなりかねません。
前途多難な全人代です。
さて、今日の写真は、旬のホタルイカと、珍しく貝から外したばかりのアオヤギ@ますこみ鮨。引っ越し新装なった外国人特派員協会の中の知る人ぞ知る鮨のお店。予想されるゴーン元日産会長の記者会見場もこの協会かな??