VIX危機水準突破、金には換金売りの波
市場の警戒感を示し恐怖指数と呼ばれるVIXが危機水準とされる40の大台を突破した。ダウ平均が4日連続で下落する過程で、20台の後半から警戒水域とされる30を突破していたが、28日には一気に40に跳ねた。
ダウ平均942ドル急落のキッカケはフランスのロックダウン再発動、そして、ドイツも「ロックダウン・ライト(軽い)」準備との報道だ。米国でも感染秋・冬の波が拡散中で、地域限定「ロックダウン」が検討・実行されつつあるので、「対岸の火事」と見てはいられない。
更に、米大統領選挙について、どちらが勝っても「訴訟合戦」が長期化する可能性も浮上している。その間、政治の空白期が生じて、悪化するコロナ情勢への対応が後手に廻るリスクが意識される。追加経済対策の大統領選挙前決定は遠のいた。コロナ急速拡大が発する危機感で共和党・民主党が両党合意に歩み寄る淡い期待に市場はすがる思いだ。とはいえ、バイデン氏にしてみれば、切り札は選挙後に残しておいたほうが、就任後の実績として誇示できる、との読みもあろう。結局、マーケットは、いつもながらFRBからの助け舟に期待する。おりしも大統領選挙翌日から11月4-5日の日程でFOMCも開催される。とはいえ、金融政策の緊急発動も有力な手段を欠く印象は否めない。
加えて、上院公聴会にフェイスブック・ツイッター・アルファベットCEOが招致され、SNS書き込み削除が検閲か否かの問題が厳しく追及された。大手IT銘柄は軒並み4-5%急落している。そのなかで本日はアップル、フェイスブック、アルファベットなど注目銘柄の決算が集中するスーパーサーズデーだ。7-9月期米国GDP成長率も発表される。30%台のV字型回復となりそうだが、10-12月期の落ち込みのほうがマーケットは気になる。
このような市場環境で、欧州株が、まず売られたので、結果的に米国株への運用配分がオーバーウエイトになり、リバランスの売り圧力が米国株にかかる。逆に、アジア株(含む日本株)はアンダーウエイトだったので、買い圧力がかかりやすい。現実的には、未だ「日本株へ」の掛け声がウオール街で聞こえてはこないが、環境は熟したと言えよう。
今後、コロナ情勢が更に深刻化すれば、そもそも株を含むリスク資産への運用を減らして現金を増やす動きが顕在化する可能性もある。
既に28日には金に換金売りが出始め、1.6%ほど下げ、1900の大台をかなり割り込む1870ドル台で推移している。ニューヨークの外為市場では「安全通貨」としてドルと円が同時に買われる状況も見られた。総じて、大統領選挙がいよいよカウントダウンに入り、投資家がポジションの身辺整理に動いている。
この市場混乱が落ち着けば、金が買い直されるだろう。28日にも「今日のお薦めトレード」として「下がったところの金買い」の掛け声がNY市場では聞こえた。株と金が同時に売られるようではリスク分散効果が期待できないとの機関投資家の見解もあるが、それを言ったら、他の市場でも、従来の市況の法則が相次いで効かなくなっている。そもそも株と債券の相関関係もバラバラになってきた。
コロナは市場を変えた。「以前はこうだった」と経験則に頼る古い頭では通用しない。
その古い記憶の証拠写真が、筆者の写真アーカイブで見つかった。4年前トランプ当選直後にワールド・ビジネス・サテライトで筆者が金は1300ドル台回復などと語っている。TBSのあさチャンでも、トランプ不確実性で金高騰とのコメント。まさかコロナなどと夢の夢の夢にも思わず。あの頃、セミナーでは2020年予測として金7000円を唱えていたものの、時の流れを感じるね。そして4年後の米大統領選挙後、果たして、金価格はどうなっているか。筆者の予測は3000ドル!