今年のゴールド相場の最大の特徴はほとんどディップらしいディップが無かったということです。
年初から2,000ドルから2,800ドル直前までほぼ一直線の上げが続いていました。そして今回のこの下げは、その一本調子の上げにようやく調整らしい調整の場面を迎えたということになります。
そのきっかけとなったのは米大統領選挙。
歴史上稀にみる接戦と言われ、どういう結果になっても混乱が予想された米大統領選は、ゴールドを買う一つの要因となっていました。ところがあっけなくトランプの圧勝で大統領選挙は終わり、マーケットの反応は、ドルが上昇、長期金利も上昇、株が買われ、ビットコインも上昇そしてゴールドが売られるというものでした。ビットコインの上昇は明らかに「米国を暗号資産の首都にする」と豪語していたトランプが選挙に勝ったため。しかしゴールドの下落は、トランプが勝ったからではなく、選挙後の混乱を見越してゴールドをロングしていた短期トレーダーのポジション整理がきっかけであったと思います。
冒頭に書いたように年初2,000ドルから始まったゴールドは10月末には2,800ドル直前まで上昇、ほとんど調整局面らしい下げ場面が無いまま上昇してきました。調整があったとしてもそのディップは非常に浅く、すぐにまた上昇が続きました。大統領選挙後の下げはそういう意味で今年初めてのまともな調整局面だと言えます。大統領選挙前、2,750ドルだったゴールドは、フィラデルフィアでのトランプ勝利の確定と同時に大きく売られ、11月第二週現在2,600ドルを割り込んでおり、歴史的高値からはほぼ250ドル下落しています。しかし、年初からのゴールドの一本調子の800ドルもの上げを考えると、200~250ドルの調整は逆に健康的なものであると言えるでしょう。
特に3月からの相場の上昇は歴史的高値を書き換え続ける上昇だっただけに、積立で機械的にゴールドを買う「積立買い」以外ではなかなか買えなかった投資家が多かっただろうと思います。ゴールドを新たに買いたいと思う投資家の数は、今年は加速的に増えているはずですが、下がったら買おうと思っているうちに全く下がらず上がり続けてきたのです。
このディップはそういった買いそびれた投資家にとっては千載一遇のチャンスでしょう。この期に及んでもっと下がるかもと思って買わない投資家はおそらくどうなろうとゴールドに投資はできない投資家だと思います。
もちろん、ここからまだ下がる可能性はあります。しかしこの時点でゴールドのRSI(相対力指数)は30台前半と年初来もっとも売られ過ぎのレベルにあります。おそらく今回のディップの底値は、下がったとしても2,500ドル近辺がいいところではないでしょうか。我々個人投資家のみならず、新興国の中央銀行にとってもこのディップは非常に魅力的な買い場となっているはずだからです。
筆者にとっても今年のゴールドの買いは基本的に積立に任している状態で、スポットで金の果実(1540)を買ったのは8月5日のブラックマンデーがこれまで唯一のチャンスでした。今回のディップはそれ以来のチャンスであり、今は連日買い指値をしています。
トランプ政権が始まるのは来年の1月20日です。現在のこのマーケットの動きは、まだすべて期待もしくはトランプ勝利に浮かれたユーフォリア(高揚感)からの「トランプトレード」です。行き過ぎた期待には必ず反動の動きがあります。トランプ新大統領は、関税の厳格化、減税、積極的な財政出動の方針を強く打ち出しており、これらはどう考えてもインフレにつながる政策です。先日米国の政府債務は36兆ドルを越えました。GDPに対する債務の割合も120%を超えています。トランプ第二次政権が、もしそのいう通りの政策を実行した場合、この債務膨張はさらに加速されることになります。現在でももはや国債(借金証書)に対する利払いだけで1兆ドルを越え、もはや米国の国防費用を超えています。当然これは持続不可能なレベルの借金です。
この状況においては、新興国のドル離れによるゴールド買いはより活発化するでしょう。
そして我々個人投資家にとってもゴールドをポートフォリオへ入れておくべきなのは明らかでしょう。
だとすれば現在のこのディップはその千載一遇のチャンスであるということも明らかではないでしょうか。
以上