先日Silver Instituteから「World Silver Survey 2024」が発表されました。
これは現在シルバーにおいては最も権威ある需給レポートです。
メインスポンサーのSilver Instituteの名前を冠していますが、実際の調査作成はMetals Focusが行っており、彼等のGold FocusそしてPlatinum Group Metals Focusの三つが毎年刊行されており、これらが貴金属業界では需給レポートのデファクトスタンダードとなっています。
今回はこのレポートからの重要と考える部分を紹介します。
1.供給不足は続く
2019年から始まった供給不足は2023年も続き、マーケット全体での不足分は4,422トンとなりました。
そしてより衝撃的なのは2024年今年の見通しが87%アップの8,250トン不足になることです。
2.シルバーの供給
供給の80%以上を占める鉱山生産は過去10年ほぼ横ばいであり、今後大きくそれが増加しないことは、現在まで発見されている鉱脈を考えるとほぼ確定しています。
残り20%のスクラップ回収による二次供給も同様です。
過去10年スクラップの供給量は微増の傾向がありますが、それは当然価格が高くなると回収も増えるというシルバー価格と正の関係があります。
しかしそれは需給バランスに影響を及ぼすほどのものではありません。
現在の最大の需要成長分野である太陽光パネルからのシルバー回収が、まだコスト的に合わず、実質的にはほとんどなされていないというのも回収が思った
ったほど伸びない厳しい現実の背景にあります。
3.需要の爆発的な伸び
その最大の要因は太陽光発電のシルバー需要です。
2023年の伸びはなんと前年比64%という驚きの伸び率となっており、2022年の3,672トンから6,017トンへと大きく増加し、これが工業用需要全体を20%増加させる結果となりました。
2024年の太陽光発電のシルバー需要予想はさらに増加、7,217トンとしており、20%の増加が見込まれています。
2015年には1,852トンであった太陽光需要が、2024年には7,217トンとほぼ4倍になっています。
太陽光発電は世界の脱化石燃料の動きの中での中心的エネルギー源であり、この需要はまだまだ、特に新興国においては大きく伸びていくことが予想されます。
コストが高いため「省シルバー化」はもちろん進められています。
実際ソーラーパネル一単位に使われるシルバーの量は2014年を100とすると現在は40を割っています。
それにも拘わらずこの分野でのシルバー需要量は同期間に1,555トンから6,220トンに増えています。
つまり太陽光パネルの需要は加速度的に伸びており、それに伴いシルバーの需要は伸びる一方だと言えることができます。
4.地上在庫の減少
2019年から続いた供給不足がこれまで価格に大きく反映されてこなかったのは、地上在庫がその不足分を補って来たからだと考えられます。
しかし世界のシルバーの取引の基準であるロコ・ロンドン・シルバーの口座の現物残高は2021年の36,500トンから、現在は25,300トンまで減少、ニューヨーク・コメックスの在庫も同様に2021年の12,400トンから現在は9,000トンと急速に現物の引き出しが進んでいます。
供給不足は確実にそして加速度的に地上在庫を減少させてきているのです。
それがシルバー価格に直接反映されることがおそらく遠くない未来に始まってくるでしょう。
5.今後の見通し
年初からのシルバーの上昇率は一時15%近くになっており、ゴールドの12%を上回るものになっています。
しばらく続いていた金銀比価90対1という歴史的にみても極端に割高なゴールド、そしてそれに対して極端に割安なシルバーに注目する投資家も確実に増えてきているのです。
供給不足はじわじわとシルバーの底値を上げていくでしょう。
しかし、シルバーが大きく跳ねる原因になるのは、いつも個人投資家のまとまった買いです。
それに火をつけるのは年後半にずれ込んだと思われるFRBの金利下げで、ゴールドがこの次跳ねるときではないでしょうか。
今年後半には過去5年の29ドルという上値抵抗線を突破し30ドルの大台がありえると考えます。
シルバーが割安のうちにある程度ポジションを取っておくのがおもしろいのではないでしょうか。