前回のコラムの相場予想からだいぶ時間が空きました。
その間にゴールドが非常に大きく上昇しています。
年初のゴールドはドル建てで2,060ドル、円建てで9,350円でした。
今年はドル建てでも円建てでも史上最高値を更新するだろうと予想していましたが、3月前半には円建てゴールドそしてドル建てゴールドもともに昨年につけた歴史的高値の10,040円、2,133ドルを越え新たな歴史的高値を記録しました。
それ以降、歴史的高値の更新が続き、これを書いている3月28日現在、円建ての高値は10,755円、そしてドル建て高値は2,213ドルと、この3月の価格上昇は目を見張るものがあります。
この動きは超長期的なゴールドの動きを根底にして、最近の状況がそれに拍車をかけているものと考えます。
今年度の最終コラムとして、それをみておきます。

 

(ドル建てゴールド)
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(ドル建てゴールド)
(円建てゴールド)
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(円建てゴールド)

1.    超長期的ゴールド価格の流れ


ゴールドの価格は基本的に上がっていくもの、と日頃から言っています。
現在我々が見ている「変動相場制」が始まったのは1971年、ニクソン米大統領が第二次世界大戦後からの「ブレトンウッズ体制」によって、米国が1トロイオンスのゴールドと35米ドルとの交換を保証していた「金ドル本位制」を一方的に破棄したときに始まります。
その後、米ドルもまた米ドルを通じてほかの通貨もゴールドとのつながりを失い、「不換通貨=フィアットマネー」となったのです。
それ以来ゴールドという箍を失った通貨の価値は下落する一方となりました。
各国の政府は自分の好きな時に好きなだけ通貨を刷ることができるのであり、これは当然の結果だと言えるでしょう。
↓のincrementum社のチャートは1971年の主要通貨とゴールドの関係を100とし、各通貨のゴールド価値の変化を表したものです。
1971年は100だったものが、米ドルは現在1.62、ユーロは1.82、英ポンドは0.84、スイスフランは7.34、日本円は3.70と大きくその価値が棄損していることがわかります。
例えば米ドルは過去53年間でその価値はゴールドに対して約62分の1になったのです。
まさに価値ゼロに向かって動いていると言っていいでしょう。
現在の円安を考えると円の価値がドルの倍以上あるのは、1971年時点でのドル円が360円というあまりに円安であったということがその背景だと言っていいでしょう。
現在の国際資本主義経済が続く限り、世界に出回る通貨の量は増えていくのが必然です。
そう考えるとそういった増加し続ける、そして価値が希薄化していく通貨に対して、その流通量に明らかな物質的限界が存在するゴールドの価値は上昇を続けていくはずです。
これが超長期的なゴールドの価格推移の基本です。
つまりゴールドの価値は通貨の価値に対して上昇し続けるということです。
通貨が刷られ続ける以上、これは宿命だと言っていいでしょう。

 

(ゴールド対フィアットマネー:ゼロへの行進が続く)
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(ゴールド対フィアットマネー:ゼロへの行進が続く)
(1970年からのゴールドの上昇率は平均9.9%、年率平均では7.9%)
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(1970年からのゴールドの上昇率は平均9.9%、年率平均では7.9%)

2.    ゴールドの短期的状況


この長期的状況のベースに今、より短期的な強材料が出てきています。昨年米長期金利が5%まで上昇しました。
本来であれば金利の上昇はゴールドの売り材料となります。
長期金利が前回5%まで上がったのは2007年でした。
その時のゴールドは700ドル近辺です。昨年の5%ではゴールドは1,900ドルを割り込みませんでした。
欧米の投資家は教科書通り、金利の上昇でゴールドの売りに回りました。
Gold ETFそしてComex先物という代表的なゴールド投資商品では投資家の売りによりその残高は減少が続いていたのです。
ところがそんな売りにもかかわらず、ゴールドの価格は目立って下がりはしませんでした。
2007年との大きな違いは巨大な中央銀行の買いです。
2022年1,082トン、2023年1,037トンとそれまでの一年あたりの中央銀行の最大の買い数量が600トン前後であることを考えるとこの大きな買いは欧米投資家の売りを吸収して有り余るものだったと言えます。
そして問題はここからです。
2023年7月に最後のFRBの金利上げがありました。
そしてそれ以来現在まで政策金利は据え置かれていますが、今年6月には金利下げに入り年内に3回=0.25% x 3= 0.75%の金利下げをFRB議長もはっきりと述べています。
とすると、これまで金利の上昇を材料にゴールドを売ってきた欧米のヘッジファンドを代表とする投資家が、金利の下げを材料に買いに回ることは明白です。
それがここに来てすでに出始めており、Comexではもはや2月半ばから投資家の買いが強くなっており、一カ月で約300トンの買いになっており、それがこの3月からのゴールド上昇の直接的原因になっています。
Gold ETFも一貫して減っていたその残高が今月に入ってから増加に転じており、明らかに欧米投資家の姿勢は変わってきています。
今後、実際に利下げが始まるとこの買いはより強くなっていくでしょう。
だとすれば、ゴールドの歴史的高値の更新は今年後半も続いていくと考えるのが妥当でしょう。


3.    長期的ゴールド投資のすすめ


筆者は個人投資家の皆さんから「歴史的高値から買っていいのか?」「もう高すぎて怖くて買えない」ということをよく言われます。
しかしこれはつい最近の話ではありません。
円建てゴールドが5,000円を超えたくらいからずっと言われています。
5,000円で高すぎると思っていた人たちは当然ゴールドを買えていません。
今はもうその倍以上に値上がりしています。
そういった人々は「あの頃買っていれば」と思っているでしょう。
ここまで書いてきたように、ゴールドはおそらく長期的にはまだまだ上昇していくと思います。
それは通貨の価値がゴールドに対して縮小していく運命にあるからです。
ではどうやって買っていけばよいのか。
個人的にはゴールドETFを積み立てるように定期的に買っていくというのがもっとも簡単にできるゴールド投資の方法だと思っています。
短期的な利益を狙うのではなく、日本人として日本で働く限り、基本的に増え続ける円資産の一部をゴールドに置き換える感覚で、つまりポートフォリオの分散をする意識で買っていくのが最も心安らかに、歴史的高値でも気にせずに買って行ける方法ではないかと思います。
過去のことは気にせずに将来を考えてゴールドを保有しましょう。