出遅れていたが、これだけ株価が異常に乱高下すると、さすがに、金への逃避マネー流入が顕在化してきた。1230ドル台へ徐々に価格水準を切り上げている。対して、安全通貨としての円買いが、思ったほどは進行していない。相場は生き物。刻々、状況は変わる。無理に理由付けを試みても虚しい。
さて、サウジマネーのブランドイメージが堕ちている。
「このプロジェクトにはサウジアラビアからのオイルマネー出資も見込める」
サウジアラビアの金銭的参加は、安定的支援と見なされ、企画書にも強調されたものだ。
あのテスラもサウジマネー出資を模索していた。
カネの出どころは多くの場合「PIF」(パブリック・インベストメント・ファンド)だ。ソフトバンクの10兆円ファンドにも出資している。運用総額30兆円相当以上とされ、ムハンマド皇太子の「ワンマン運用」だ。脱原油の長期的国家戦略実現のために欠かせない原資でもある。
そのブランドイメージが、急速に失墜している。
「サウジマネーはダーティー(汚れた)マネー」扱いされ、特に先進国ではSRI(社会的責任投資)の観点から、忌避の傾向が強まりそうだ。
「砂漠のダボス会議」と称される、現在開催中のサウジ経済フォーラムには、スポンサーとして、マッキンゼー、PWC、デロイト、ベインなどの有力コンサルティング会社が名前を連ねている。モルガン・チェース銀行やシーメンスのように参加見送りを決めた企業もある。
サウジマネー取り込みか企業イメージ優先か。踏み絵を前に、参加企業の決断が揺れる。
サウジ側から見れば、出席か欠席か、「真の友人」を見極める機会ともなった。あえて参加を貫いたトタル(フランスのエネルギー関連大手)には、声高に称賛の声を送る。総じて、アフリカ・アジア勢の参加が多いようだ。
自国民の参加という「サクラ」入れて、「満席」とされ、短時間ながらムハンマド皇太子が壇上に立ったときには、スタンディング・オベーションとなったという。
このような一連の報道が流れると、市場では、保有ポートフォリオのサウジマネー「コンテンツ」を見直す動きが顕在化する。
なお、日本への天然ガス供給元としてのカタールの立場が益々危惧される。イラン寄りとサウジ側からレッテルを貼られ、村八分の状況が更に危うくなる。カタールとしては、最大の天然ガス油田を海底でイランと実質的に共有しているので、離れられない仲だ。更に、カタールには米軍重要基地もあるので、米国の関与も微妙である。
サウジリスクは、単に、オイルマネーの保有株売却の可能性だけではなく、根が深い問題を内包している。