27日のNY株価は「9回裏逆転満塁ホームラン」。

寄り付きから300ドルほど下げ、消費者景況感指数が大幅に悪化したことで、売りが加速。超短期筋のCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)などの売り攻勢が続き、一時は600ドル超安まで下がった。ところが、大引け1時間ほど前になって、急速に買いが入り、終わってみれば260ドル高。この間、実に800ドルを超える急反騰である。

買いの主体は年金。株価大幅下落の影響で株ポートフォリオ配分が急減したので、元の割合に戻す、所謂リバランスの買いだ。そこに、CTAの損切買戻しも加わった。

いずれにせよ、これだけのボラティリティーはコンピューター抜きでは考えられない。機械が売り、人間は機械の動きを推測する解説役に回る。

NY金は1280ドルに接近中。

とはいえ、今年を振り返れば、前半はボラティリティーが低く、VIXも10の大台を割り込み、流動性不足でトレーダーたちは干上がった。結局、10月以降、米中貿易戦争、金融政策への不信、トランプ政権内の異変などファンダメンタルズが激変して、機械が資産価格変動を増幅したというべきだろう。

さて今日は今年最後のブログ更新。ウオール街で話題の2019年ビックリシナリオを紹介しておく。

まず、金融政策関連では、カリスマ投資家の一部から2019年利下げ説が語られる。逆イールドが本格化して経済減速が強まり、関税引き上げの負の効果も顕在化して、FRBが利下げに追い込まれる、というシナリオだ。同時にFRBの膨張した資産の圧縮プログラムも停止。その結果、米株価急騰との見立てだ。金も急騰。

なお、パウエルFRB議長解任の可能性もゼロではない。来年早々に、トランプ・パウエル両氏の「プライベート・ミーティング」をホワイトハウスが画策中とも伝えられる。

次に、政治関連では、やはり、トランプ大統領弾劾の可能性。上院の過半数を共和党が占める限り、ほぼあり得ないシナリオだ。しかし、ロシアゲート関連でモラー特別検査官が決定的証拠を握ると、共和党内から造反議員が出るかもしれない。弾劾まで進展せずとも、大統領職を離れた後に逮捕の可能性が強まると、市場も無視できまい、との読みである。

そして、地政学的リスクに反応薄い地合いが続くが、サウジ核装備となれば、中東緊張感も急激に高まる。そもそもイランが核合意から離脱して、独自の核開発を再開すれば、対抗上、サウジも座して事態を甘受するとは思えない。しかも、米国にとっては、最大の武器輸出先だ。既に、米議会では、サウジとの核協力の場合の査察方法などが議論されている。これは原油も金も買われるシナリオ。

米中関係では、共倒れ回避のため、一転、トランプ・習近平両トップが和解するケースが挙げられる。現状では、米中貿易戦争が90日越えの長期化必至と見られているので、サプライズとなるのだ。

中国経済悪化、特に党長老の最も嫌う失業増=国内社会不安が嵩じると、習近平集中体制にも亀裂が生じるかもしれない。既に、今年の北戴河での長老との会議では、米中貿易戦争深入りをけん制するイエローカードが出ている。

ブレクジットに関しては、どのような展開になろうと、サプライズ。再国民投票がビックリシナリオとなろうか。

市場内部要因としては、AIアルゴリズムのプログラム売買による異常なボラティリティーが常態化するリスクが懸念される。一日の変動幅がダウ平均1000ドル、日経平均1000円などが珍しくなくなるビックリシナリオだ。年末の異常な乱高下は薄商いゆえの特殊現象であろうが、相場には思わぬ時間帯に真空地帯が生じるものだ。

最後に、仮想通貨市場の破綻。既にバブルはじけた感が強い。仮想通貨ブームが世界の投資家のアニマル・スピリッツを刺激して、他のアセットクラスにも高揚感が拡散していた。それゆえ、破綻すれば、去勢されたごとき効果が市場には漂うかもしれない。

最近、ウオール街ではベテランほど過去の市況の法則から抜け切れず、相場読み競争では、新人たちに軍配が上がる傾向がある。2019年は、これまでの相関関係など蓄積されたデータを正月期間中に「消去」することも一案であろう。

 

なお、年末年始も欧米市場は開いており、今年は特に波乱も予想される。ツイッター@jefftoshima では、最新情報流します。

それでは良いお年を。

 

 

なお、今週発売中の週刊エコノミスト36ページに今市場を荒らしているコンピューター・プログラム・トレードについて寄稿しています。