先週は中国全人代。今週はFOMC米国金融政策。どちらも重要度は高い。
FOMC声明文発表とFRB議長記者会見が日本時間春分の日早朝に迫ったところで、予想される市場への影響をまとめておく。
まず、今回利上げが見送られることは確実といえる。市場の関心は、年内の利上げ回数だ。前回のFOMCでは、2019年に利上げ2回を見込むFOMC参加者が多かった。しかし、その後、パウエル議長、クラリダ副議長はじめ地区連銀総裁たちからも、「利上げは忍耐強く慎重にデータ次第で決める」との趣旨の発言が相次いだ。その結果、今や、市場では年内利上げ停止観測が主流になっている。2020年には利下げ開始の観測が浮上しているほどだ。そこまでFRBの「ハト派」姿勢を織り込んだ市場が注目するのは、FOMC声明文と同時に発表されるFRB最新経済見通しだ。特に、ドットチャートと言われるFOMC参加者の金利予測分布で、2019年は利上げ無しとの観測が主流と確認されれば、債券市場でドル金利は軟化、NY株式市場は上昇、外為市場ではドル安・円高進行、商品市場では原油・金価格上昇が見込まれる。
逆に、FOMC参加者の多くが、依然、利上げを2回予測すれば、上記と反対方向の動きとなろう。
更に、重要な問題は、FRBの米国経済に関する評価だ。年内利上げが仮に見送られる観測が強まっても、その理由となる米国経済及び中国・欧州経済への強い懸念が声明文に明示されれば、特に株式市場には下押し圧力となりかねない。いっぽう、年後半には世界経済が持ち直すとの観測がにじむ現状認識であれば、9月か12月頃に1回は過熱予防のための利上げが必要との見解となる。その場合は、株価にとって、長期的には上げ材料になる可能性がある。
果たして市場は、経済下振れリスクを重視するか、利上げ回避の緩和姿勢を歓迎するか。決め手は、声明文で使われる形容詞・副詞などの単語、更に、記者会見でのFRB議長の受け答えであろう。「忍耐強く」との単語が繰り返されることになりそうだが、そのpatientという形容詞に、強弱を示す副詞が一語つくか否かで市場の反応は大きく変わる。英文解釈のごとき世界だが、これが市場の実態だ。例えば、パウエル議長が、「FRB緩和姿勢を維持」を語ったとき、そこにfor now(当面は)という表現をさりげなく加えたことで、市場は、すわ、近々利上げか、と反応した実例もある。最近はパウエル議長も発言には慎重になり、壇上対談でも、原稿を読むほどになったが、台本無しの記者会見での発言には要注意だ。
更に、利上げにも、良い利上げと悪い利上げがある。
今後期待される景気好転が、労働生産性上昇の結果であれば、その過熱を防ぐ利上げは良い利上げとなる。
そこで、最新の米国労働生産性統計を検証すると、2018年10-12月期には前年同期比で1.8%上昇した。2015年1-3月以来の上げ幅である。2018年通年で見ても、生産性の上昇トレンドは続いた。FOMCが、この点を評価すれば、例え利上げとなっても、株式市場では「利上げ、恐るまじ」との見解が浮上しよう。
次に、市場の注目点は、量的緩和政策で国債・MBS(住宅担保証券)を買いまくった結果、ピークでは4.5兆ドルにまで膨張したFRB保有資産の圧縮プログラムだ。現状では、毎月500億ドル程度減らし続け、4兆ドル規模まで縮小している。この資産圧縮は、量的緩和政策の巻き戻しゆえ、量的引き締めとも呼ばれ、緩和慣れした株式市場では嫌気される。パウエル議長が、この資産圧縮を今後も「自動操縦」で続けると語ったときには、株価は急落して、市場は混乱した。懲りた同議長は、その後、発言を撤回して、「年内には資産圧縮終了」の意向を議会公聴会でも語った。市場は、今回のFOMCで、9月頃には終了かと見込み始めている。この終了時期が仮に6月頃となれば、株式市場は歓迎しよう。いっぽう、終了時期が明記されないと、「ぬか喜び」の疑念が頭をもたげる。ここでも、近々に終了か、いずれ終了か、では、市場の反応が大きく振れるのだ。
なお、資産圧縮については、記者会見で、最終的なFRB資産適正規模が何兆ドルか、との質問も出よう。市場のコンセンサスは、3.5兆ドル程度だ。これが3兆ドル以下となれば、まだ資産圧縮継続と解釈されかねない。3.5兆ドル以上であれば、おのずと終了間近との観測が強まろう。
更に、保有資産の内訳も重要視される。
住宅担保債券は償還時期が、まだかなり先の長期債が多いが、国債は償還近い長期債が多い。仮に3.5兆ドルの資産規模を維持するとすれば、償還された国債分は再び国債に再投資される。その際、長期債と短期債の運用配分が市場の変動要因となるのだ。基本的にはFRBが長期債を買えば長期金利が下がり、市場ではリスク資産が選好される。ゆえに、短債を増やしておけば、将来、短期債から長期債に乗り換えることで、市場には緩和効果が働く。これは、FRBにとって有力な緩和政策手段となる。
景気循環で次の景気後退期に、現状では、FRBの利下げも2.5%が限界だ。歴史的に見れば、過去の利下げサイクルは平均で5%弱の利下げが景気回復のために必要であった。そこで、金融政策の手詰まり感が懸念されるおり、FRBとしては金融政策の道具箱には出来る限りのツールを備えておかねばならない。
そこで、インフレターゲットを2%から引き上げる案も、一部の地区連銀総裁からは示唆されている。インフレ率が2%を超えても、利上げせずとの可能性が語られるだけで、株式市場には買い材料となろう。
なお、利上げにも、良い利上げと悪い利上げがあることを付け加えておく。
今後期待される景気好転が、労働生産性上昇の結果であれば、その過熱を防ぐ利上げは良い利上げとなる。
そこで、最新の米国労働生産性統計を検証すると、2018年10-12月期には前年同期比で1.8%上昇した。2015年1-3月以来の上げ幅である。2018年通年で見ても、生産性の上昇トレンドは続いた。FOMCが、この点を評価すれば、例え利上げとなっても、株式市場では「利上げ、恐るまじ」との見解が浮上しよう。
最後に東京市場への影響は、明日が休日ゆえ、22日金曜日まで待たねばならない。その間、特に海外外為市場で、日本時間21日早朝の取引が薄く、東京市場が休日であることを狙った投機筋が円売買を仕掛ける可能性に要注意だ。ドル乱高下すれば金への影響も必至である。
今日の写真は、葛切り@六本木虎屋。ほんものの葛切りは今や珍しい。なかなか東京で出会うことはない。やっぱり旨い。黒蜜の甘さが疲れた体に沁みる~