背に腹は変えられぬ、ということか。
昨日本欄で書いたが、中国金融当局は、金融政策を転換している。
これまでは、シャドーバンク(影の銀行)を締め上げ、野放図な融資を抑え込むなど、巨額債務軽減を優先させ、金融引き締め政策を採ってきた。
量から質への転換が標榜された。
しかし、当然の成り行きとして、引き締めれば景気は減速する。
加えて、貿易戦争の悪影響もジワリ中国経済の体力を消耗させるは必至。
そこで、案の定、習近平氏は、景気浮揚を優先せざるを得なくなった。
サプライサイドでは減税。更に、大手商業銀行に8兆円規模の流動性注入。
財政政策も、暫時凍結してきた道路、鉄道などインフラ建設を再開。
地方のインフラ投資をファイナンスする地方政府に対しても、抑えてきたマネーのばらまきを再び許容せざるを得ない。
なりふりかまわぬ政策転換といえる。
長期的には、中国の巨額債務問題は更に膨らんでしまう。
いずれ、債務総額が臨界点に達し、破綻を招くことは覚悟せねばならない。借金に安楽死は無い。
ただ、とりあえず、目先の上海株価は、やや落ち着きを見せてきた。
人民元安には歯止めがかからないが、通貨安で輸出を増やし、景気浮揚に貢献する構図ゆえ、人民元高は困るのだ。通貨安のリスクであるマネー流出には目をつぶらねばならない。
インフラ工事、輸出が増えれば雇用も増加が見込め、失業は減り、消費も回復が予想される。
つかのまの木漏れ日というイメージか。
金市場でNY金の下げ材料だった、中国金需要低迷(予測)にも年内限定だが、歯止めがかかりそうだ。
NY金先物の売り残高が急増しているが、中国インドの実需が底値圏を徐々に形成するプロセスが見込める。
コモディティの非鉄関連で中国経済の体温計とされるロンドン銅価格が急反発していることも興味深い。
地政学的要因としては、イラン・リスクが要注意だ。
米国・イラン両国とも罵り合いに近い舌戦をトップが繰り広げている。
イランの核合意廃棄、核開発再開が視野に入る。
穏健派だったロウハニ大統領も、急進派「イラン革命軍」勢力を無視できず、対米強硬発言が目立つ。
革命軍は、イラン国内の災害地救助活動を通じて人心を買い、経済界にも隠然とした勢力を形成している。
彼らが国民的支持を得ると、対イスラエル、対サウジアラビアとの戦闘状態突入も現実味を帯びる。ホルムズ海峡封鎖も充分に考えられる。
いっぽう、トランプ・ボルトンのコンビはイラン憎しの感情を露わに、挑発的言動に走る。
過去の金市場の歴史でも、イランがキッカケで金価格が急騰した事例は少なくない。
北朝鮮問題が一服しているが、ロシアゲート疑惑は依然「ライブ」である。
トランプ大統領が、国民の目をロシアからイランに向けさせる意図が透ける。
2018年も中間点を通過する段階で、NY金が、年初筆者予測の上値1,335ドルを上回るかと思えば、今や、予測下値1,175ドルも視野に入る展開だ。
年前半は上値をトライした。
年後半は、急落局面もあろうが、基本的に下値を固める時期と見る。