連休中、「中国貿易統計悪化」の報に接したとき、いやな予感が走った。

正月もいきなり中国PMI悪化が新年大荒れ相場のキッカケになった記憶が未だに生々しく残るからだ。

今回もNYダウが500ドル程度急落しても不思議はない。

日本が休場中に円がNY通貨投機筋に弄ばれる可能性も頭をよぎった。

14日のアジア時間帯に、NYダウ先物は既に200ドル程度の急落を示し、NY市場寄り付きも、ほぼ同水準で始まった。

しかし、その後は、市場の潮目の変化を象徴するごとき展開になった。

売りの連鎖は起こらず、ジリジリと株価は下げ幅を縮小していった。

結局、大引けは86ドルの下落で波乱は回避された。

米決算シーズンに入り、シティーの株価が反発したことで、金融株が軒並み買われたという追い風も手伝った。

とはいえ、アップル・キャタピラー・ボーイングの米国中国関連銘柄「三兄弟」はいずれも下げている。

米中貿易戦争の経緯は、中国側のダメージが大きいのだが、米国側にもボディーブローがジワリ効き始めている。

更に、中国側の経済統計に関する疑念も消えない。

中国輸出最大基地ともいえる広東州では、同地域のPMI発表が突然停止されている。

 

しかし、情報統制にも限界がある。

まず、失業が増えれば、社会不安が嵩じて、犯罪件数が増える。

地元社会では話題となり、SNSで情報は規制の網をすり抜けジワリ拡散する。

昨年、北戴河会議で長老たちが現政権に対し、米中貿易戦争深入りに懸念を示したのも、社会不安を最も嫌うからだ。

消費者・生産者物価下落傾向も、北京などの「朝市広場」で、庶民は実態を知る。

大都市消費者には物価低下は歓迎されるが、地方から出向いてきた生産者たちには、売り上げ伸び悩みが生活を直撃する。

批判の的は地方政府に向けられる。これも社会不安を増長する要因となる。

 

そして、デフォルト。

特に、民間企業発行の社債に債務不履行の事例が出始めた。

国営企業と民間企業の利回り格差は拡大の傾向にある。

弱者は市場から退去を余儀なくされ、「国」の威を借る強者が生き残る。

かくして、国営企業と民間企業の「業種格差」、都市と農村の「城郷格差」、中国東部と南部の「東西格差」は、経済統計では明示されない不満感を増大させている。

その油に火を注いだのが米中貿易戦争であろう。

筆者が顧問を務めてきた中国の取引所や銀行の関係者は、災い転じて福となす、を願う。

米中貿易戦争により、構造改革の面で具体的進展が多少なりとも実現することを密かに望んでいるのだ。

とりあえず、外資参入に関しては自由化が緩やかに進んでいる。

対して、証券関係者は、構造改革よりインフラ投資などの「実弾」を密かに願う。

減税などの消費喚起策は、消費主導経済を目指すが、実効顕在化まで時間を要し、直ちに株買いの材料にはなりにくいからだ。

今の市場では、米中通商交渉が最大の話題だが、仮に暫時妥協が成立しても、中国経済に対する根源的疑念は晴れない。

金市場は1300ドルの心理的節目を前に、行ったり来たり。

利益確定売りも多く、さすがに1300ドルからいきなり新規の買いを仕掛けるには、なにか新材料が必要だ。

 

2019年もまだ1月。野球でいえば、一回表も未だ終わっていない。

 

今日の写真は、新年ホームパーティーにお土産で供されたルイヴィトンのワイン。

ちなみに、欧米有名ブランドは、中国顧客依存が高く、株価は軒並み安い。

それから、自家製のローストビーフ。

近所のドンキ都内最大店舗、生鮮食料品フロアーで仕入れた牛肉だけど、旨い!

 

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