フロリダ発のトランプ・アベ会談に関する報道が、米国人投資家には、日本株を取り巻く政治経済環境について知る機会になっている。「

なるほど、安倍首相にそんなスキャンダルがあって支持率が低下しているのか」「ほう、拉致という問題があって、安倍首相サバイバルの鍵となるのか」

日本株担当など知日派を除き、一般投資家にとっては、何から何まで初耳。

興味津々という感じだ。知日派と称する人でも、「日本人は北朝鮮ミサイルに備え、退避用バンカーを掘っている」など、危うい発言も目立つ。

かくして「学習」したうえで、今回の首脳会談はといえば、日本側にとってタイミングが悪いと映る。

 

今週、米国内ではコミ―前FBI長官の回顧本で、トランプ氏の御乱行ぶりが書かれ、タブロイド紙のみならず一般紙でも報道され大きな話題になっている。

更に、モラー特別検察官のロシアゲート捜査が本丸に迫りつつあり、トランプ氏のお尻に火がついたごとき状況になっている。

イメージを損なわれたトランプ氏としては、通商問題では容易な妥協はしがたい雰囲気だ。

友人として安倍首相に持たせるお土産があるとすれば、アルミ鉄鋼追加関税対象から日本も他の友好国同様に外すという措置などが指摘される。

TPP復帰については、中間選挙向けリップサービスで、トランプ流揺さぶり交渉術との見方が多い。

カドロー国家経済会議委員長らに再吟味を指示したということで、結論を引き延ばすことになりそうだ。

トランプ氏はあくまで二国間協定に執着する。日米の溝が深いことが伝わってくる。

「安倍首相、トランプ大統領と通商対決へ」との見出しが象徴的だ。

一方、北朝鮮問題については、おりしも昨日、南北首脳が休戦状態から最終平和協定締結へ動くとの一部報道がNY市場にも伝わる巡り合わせとなった。

ポンぺオ新国務長官が極秘北朝鮮訪問していて、金正恩委員長と会っていたことも本日明らかになった。

「日本置き去り」が意識されているが、反応は、肩をすくめるだけで、同情論はさほど聞かれない。拉致問題を米朝会談のアジェンダ(交渉項目)に載せることが「シンゾー」に持たせるお土産となるのか。

中短距離ミサイルの脅威については米国も共有する程度のことは言えよう。

「共有」といえば、両者とも、スキャンダルを抱えている。commiserate(同情し合う)という表現が使われていた。

 

総じて、トランプ氏は本音と外交辞令を使い分けていることは明らかだ。

安倍首相を迎えるトランプ氏の言動は友好的だ。

しかし、一足早くフロリダ入りしたトランプ氏は、集会で「我々の友人が最悪の敵だ。

我々は利用されている。欧州連合(EU)、そして日本、韓国」と名指しで非難して牽制した。

「利用されている」という表現は3月22日にもトランプ氏が使った言い回しだ。

その時は「私は安倍首相に話す。彼はいい奴で友人だ。しかし、笑いの表情がある。

その笑いは、これだけ長期間、米国を利用し続けてこられたことが信じられない、ということなのだ。こういう日々はもうおしまいだ」とまで語っている。

先週4月13日にも「日本は長年通商面で我々に厳しく打撃を与えてきた。

日本と良い取り引きするために画策している」とツイートしている。

市場は、首脳直接会談を経ても、日米通商摩擦が続くことを覚悟している

会談後も、円高警戒は解けず、トランプ不信も解けず。NY金は底堅い。

 

 

話題は変わるが、今日の記事で興味深かったのが、今日、日中鰻貿易会議開催というニュース。

日本と中国の養殖や貿易関係者が集まり、土用の丑向けの価格や供給量の見通しを話し合うという。今年は稚魚が不漁でウナギ相場は高止まり。

中国でもこれまでは需要が低級品のみだったが、上級品の需要が高まっているという。

上海では日本式のウナギ専門店が増え「うな重」が2,500円相当で供されている。

回転鮨でもサーモン・イクラと並ぶ人気ネタ。

ウナギの消費構造が変わるという。日本のウナギ好き消費者としては心配...。