
相互関税発表サプライズを受け、NY金(6月もの)は、瞬間タッチで3,200ドルをつけたあと、急落。3,000ドル台から3,200ドルのレンジで、案の定、荒い値動きを示している。
当然の成り行きだ。
あのまま3,200ドルを通過して続騰してしまうほうが、あとが恐ろしい。短期的にせよ調整局面が入り、筆者は安堵している。
いっぽう、銀やプラチナの下げが厳しいが、これは、市場が小さく、流動性が少ない市場に、投機マネーが入り込んだゆえの、当然の結果だ。本来、産業用メタルだが、年々、投機色を強めているので、筆者は、投機メタルに関して、コメントはしない。
なお、時代の潮流が自由主義から保護主義に移行する過程で世界の株式が急落。逃げ遅れた投資家が、追加証拠金の支払いを強いられ、含み益がある金を売る事例がNY市場では出始めた。
4日には、NY金が、最高値をつけたあと、売り込まれる場面があった。その理由として、「マージンコールに迫られた投機家の換金売り」が理由の一つに挙げられた。
更に、ファンドのなかには、株の損失を金の利益確定売りで補填する、いわゆる「お化粧売買」の事例も見られた。
これらの現象は、まだ小規模だが、過去のケースを見ると、信用不安に発展するリスクを孕み、要注意だ。
まだ債券市場では顕在化していないが、トランプ大統領も、さすがに、マーケットが危機的症状を示し始める段階になると、譲歩の姿勢を見せる可能性がある。ビジネスマン出身のトランプ氏ゆえ、「信用不安」には敏感であろう。
日本時間本日早朝に、トランプ氏が、「phenomenal」という単語を使い、「驚くほど素晴らしい」案があれば、関税引き下げに「オープン」であると発言したのも偶然ではあるまい。
最後に、円高急進行の話。
これは、相互関税で米国経済不況確率が上昇したことで、米ドル金利が下がり、ドル売り・円買い・ユーロ買いに発展した現象。
トランプ・サプライズの思わぬ置き土産に、外為市場も、この円高はホンモノか測りかねている。
筆者は、ご存じのように、筋金入り円安論者ゆえ、いずれ150円方向に戻ってゆくと見る。但し、今回ばかりは、相手がトランプ大統領なので、相互関税を発表どおり貫くようなことがあれば、更なる円高の可能性を認めざるを得ない。それでも、長期的には引き続き円安傾向と見る。