今日はドル円の話。


昨年、円キャリートレードで大規模な円売り攻撃を仕掛け大儲けした国際通貨投機筋が、今回の円高局面では、打って変わっておとなしい。149円台になって、初めて、日銀追加利上げ説を知った、と明かす。日銀の動きの確度はいかに、と逆に尋ねられた。

やはり、トランプ経済政策が孕むドル高圧力が無視できないようだだ。しかも、株式、債券、外為市場全てが、不透明感に包まれるなか、敢えてポジションを張るのは、1週間ほどで手仕舞う短期投機筋に限定される。まともな運用をするファンドの人たちがsmall guys(小者たち)と呼ぶ独立系の集団だ。

昨日の場合は、たまたま、新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数、景気先行指標総合指数が全て下振れしたことで、NY時間午前中から、「景況感悪化モード」が顕在化。米債券市場でのドル金利低下が外為市場のドル売り圧力を強めた。
しかし、午後に入ると、FRB高官3人が相次いで講演。市場では総じて、ややタカ派的バイアス強しと受け止められた。
グールズビー・シカゴ連銀総裁の発言では、「トランプ関税のインフレ圧力はコロナ並み」との一節が見出しとなって独り歩きした感がある。
更に、ボスティック・アトランタ連銀総裁は「中立金利は3.0-3.5%」と明言して、まだ政策金利を景気抑制的な水準に据え置く可能性を示唆した。
おりから、もう一段のドル売り攻撃に出る準備中であった短期投機筋の出鼻をくじくかの如きタイミングであった。
ちなみに、量的引き締めに関する発言はなかった。

なお「トランプのゼレンスキー独裁者発言」が、安全通貨としての円へのマネー流入を誘発したとの見解もあるので、確認してみたが、一笑に付された。

日本だけが、トランプ禍の中で例外扱いされることは楽観的に過ぎる。国内政治が政党乱立状態の国が発行する通貨を安全通貨といえるか。などなど、瞬時に否定的反応が噴出した。NY市場において、円安全通貨神話は崩れている。

総じて、25年は、外為市場において、円の存在感が、昨年より、遥かに薄い。昨年、市場を席捲した「円で儲ける」というアニマル・スピリッツが、今年は感じられない。少なくとも、年前半のドル円相場に大きな動きは出にくい市場環境である。