虚しい12月FOMCであった。
記者会見で、関税の影響について聞かれ、「未だ政策の全容が分からない。いつ、どの程度、期間は、報復関税は、など全て不明だ」と長めの陳述で応じた。
FRBは政治的に独立しているが、実質的には、トランプ政策次第で、利下げ回数なども大きく振れ、金融政策が迷走する可能性が露わになった。
データ次第で決めるとパウエル議長は常々語るが、25年はトランプ政策の影響を受けた経済データ次第ということになろう。
まずは、1月20日、大統領就任後、直ちに対中国、メキシコ、カナダへの新たな関税が発効する。トランプ氏が最も信頼する人物といわれる対中最強硬派ナバロ通商担当上級顧問が、FOMC直前のテレビ・インタビューで、「関税インフレを心配する必要はない」と力説したが、トランプ2.0を取り巻く経済環境が、既にインフレ基調ゆえ、一期目との比較は説得力を欠く。(ナバロ氏インタビューについては、前回の本欄「対中最強硬派ナバロ氏、FOMC直前に、インフレ議論に一石」にて報じた。)
トランプ大統領も関税と不法移民大量送還については、まず、選挙公約実行ありきで、その経済的影響は、出たとこ勝負の感が強い。法人減税で財政規律が緩むリスクについても、経済が良くなれば、税収も増えるという伝統的共和党思考は変わらない。
それゆえ、市場もパウエル記者会見中から、ドル金利、ドル・インデックスが24時間グラフで棒上げ状態となり、株価も下げが加速した。
金価格は2,600ドル台を割り込み暴落した。
25年のFOMCは、参加者の金利予測も、その時点での、トランプ発言に大きく左右され、会合ごとに、ドット・チャートの形も大きく変わることになりそうだ。筆者が親しくしているNYのFEDウオッチャー氏が、私らの出番はなくなるかも、と力なく話していたのが印象的であった。NY市場最前線で働く、気性が荒いトレーダーは「FRBがトランプに乗っ取られた」と興奮気味に語る。
25年のFOMCでは、これまでの体験は参考にならないどころか、判断を誤る要因になりかねない。インフレ再燃ともなれば、パウエル議長が、利下げから利下げ停止、更には利上げへの転換に追い込まれる可能性さえ、絵空事と片づけることは出来まい。
米金融政策が強力な引き締めから緩和への歴史的転換局面の最重要時点で、トランプ大統領登場という流れは、市場関係者に「クリエイティブは対応」を強いる。その市場自体も、トランプ政権一期目に比し、超高速度取引とAIの影響が席捲するという構造的変化を遂げており、売りが売りを呼ぶ如き展開が目立ち、ボラティリティーも激しくなりがちな地合いだ。
地政学的リスクについても、今回のパウエル記者会見で、聞かれていたが、「影響はある」と答えていた。
新NISA初心者組の方々も、まずはシートベルトを低くきつく締め、「胆力」を鍛える必要がありそうだ。長期積立とはいえ、市場の乱高下を冷静に見つめることが出来ることは容易ではない。
金価格も、2025年予想レンジの範囲内で乱高下することになろう。