ピーター・ナバロ氏といえば、一期目のトランプ政権で、対中関税など強硬な反中国政策の中心人物であった。トランプ氏の信頼が最も厚いスタッフとされる。しかし、一期目では、ムニューシン財務長官とコーン国家経済会議委員長との仲が悪かった。ナバロ氏は、大統領執務室での熱い議論の最中に、コーン氏が、足で蹴り上げる所作に及んだとまで、語っている。
今回は、財務長官、商務長官指名決定後、二期目の人事の最後にナバロ氏を通商関連主席アドバイザーとして指名した。最後に肝の人事をもってきたか、とウオール街では噂された。間髪入れず、対中60%関税案を大統領就任後、直ちに実行とは彼の策とされる。
同氏は、議会乱入事件共謀の咎で収監されていたが、ほどなく保釈。その足で、共和党集会に駆けつけていた。
そのいわくつき人物が、17日の米経済テレビに生出演した。FOMC前ゆえ、話題はもっぱら関税がインフレ再燃を誘発するリスクについて。
ナバロ氏曰く、
「今回はベッセント財務長官というチェスの名人で金融のプロがいる。供給サイドのインフレは、既に、原油価格は75-80ドルから一時は50ドル台にまで下がった。緑の革命は、風とともに去った。一期目の政権では、財務長官との意見の相違が目立ったが、今回は違う。需要サイドのインフレは、膨張した財政赤字をFRBの量的緩和政策が賄った結果であった。今回は、マスク氏率いる「政府効率化省」も発足したことの影響が大きい。」
この発言を聞いたウオール街の人たちは、
「あたかも、マスク氏が生産性向上によりインフレを抑えるとでも言うつもりか。そもそも、12月FOMC直前に、FRBの量的緩和がインフレの元凶と言わんばかりの扱いは、FRBへの政治的介入が当たり前との議論だ。もし、関税がインフレを再燃させても、パウエル議長とベッセント財務長官に責任を取らせる意図が透ける。」
と、怒りのコメントが目立った。
なお、ナバロ氏は、ソフトバンク孫氏の名前を挙げ、我々の減税策と規制緩和策に共感した孫氏を始め、総額1兆ドルを米国に投資すると表明した。このような評価は米企業、特に中小企業の重荷を軽くするであろう、とも述べている。
ワシントンの政局に詳しい人たちの間では、2期目のホワイトハウスのウエスト・ウイング(西棟で大統領執務室があるところ)に閣僚の誰が入るかが話題になっているが、ナバロ氏が最側近の部屋を与えられるという説も流れている。
「関税は駆け引きの材料ではない」と明言しているナバロ氏の動向が市場でも注目されている。
英語を勉強したい人は、
参考資料 インタビュー動画↓
Peter Navarro: You'll see over $1 trillion of investments from Trump's tariff & trade policies
https://www.cnbc.com/video/2024/12/17/peter-navarro-youll-see-over-1-trillion-of-investments-from-trumps-tariff-trade-policies.html