NY金(取引の多い12月もの)は2,440ドル、スポットで2,400ドル前後。いずれも急騰している。
今週、FOMC開催で利下げに積極的な姿勢が予想されているからだ。
しかし、ドル金利が下がれば、外為市場でドル相場に短期的に下げ圧力がかかり、ドル安・円高となる。
円建て金価格にも下げ圧力が強まる。
海外も国内も同時金高という都合の良い状況は続かないが、中期的トレンドは、やはり円安に振れやすいと思う。
そこで、今日は、為替の話。
日本側の為替介入当局にとっては、思わぬ強力な援軍となったトランプ氏。
「ドル円の深刻な為替問題」とブルームバーグ通信に語っただけで、NY市場では円売り為替投機筋のポジション巻き戻しが誘発された。
同時進行的に、日本側金融当局による断続的な為替介入があったことも市場内では推定されている。
さすがに、140円台から円を売っては買い戻す為替投機を繰り返し、連戦連勝の流れに乗っていた百戦錬磨のプロたちも、トランプ氏の口先介入に対しては、矛先を収めざるを得なかったようだ。
とはいえ、トランプ氏は、いかにして、ドル相場を安くすることが出来るのか。
週末のNY市場筋との対話でも、「まともに市場介入でもする気なのか。それなら無理筋だ」と話題になった。
「大好きな株価が暴落するほどの景気悪化になればドル安になるが」とジョーク気味に語るトレーダーも居た。
たまたま、ドイツ銀行の著名為替アナリスト、サラべロス氏が、米国側がドル売り・円買い介入で効果をあげるためには、2週間にわたり1兆ドルが必要とのレポートを出したことも注目された。
日本側のこれまでの介入規模では、効果が限定的であったとの評価に基づく試算だ。
NY為替市場では、世界中からの巨額のマネーが取引される。
その中で、日本の金融当局の「大規模」介入も、アウェイの戦いを強いられ、「もぐら叩き」の如く、次々と頭を出す投機筋に手こずったことは明白なのだ。
今週は中銀ウィークだが、日銀金融政策決定会合とFOMCの結果次第で、150円もあれば、160円もありうる。
日経平均が連日、1,000円単位で乱高下する現状も、日米金融政策の不透明感を映すひとつの現象と言えよう。
新NISA導入をキッカケに株式市場に参入した投資初心者の多くは、いきなり冷や水を浴びせられた如き成り行きに当惑の反応が目立つ。
いかに、老後を視野の資産運用ゆえ、長期的に考えよ。
複利効果も吟味したうえで、始めるなら今、と説かれても、株価ボードの数字が上に下に大振れする事態を冷静に受け止められる「胆力」がまだまだ鍛えられていない。
筆者は投資理論も大事だが、まずは「リスクへの耐性」が必要と説くが、こればかりは、セミナーや書物で教えられるものではなく、痛い思いを体験して心理的に醸成されるものだ。
特に、日本人はリスク耐性が弱い。
筆者が勤務したワールド・ゴールド・カウンシルで、日米中など主要国の個人に投資について同じ質問のアンケート調査を実施したことがある。
その結果、米国人と中国人の個人投資家は似ていて、例えば「相場がここまで上がったのだから、もっと上がるはず」と考える傾向がある。
対して、日本人は「ここまで上がったのだから、要注意。」と慎重になる。
理論で説明できないと動かない。
対して、米中の投資家たちの特徴は、「理論が通らないときも多い。まずは実行」と動く。
もちろん、これは一般的傾向に過ぎないが、筆者も日米中の個人投資家に接してきたので、この調査結果には納得する部分が多かった。
円高か円安かの問題も、正確な答えはない。
しかし「外貨投資は為替リスクがあるから気をつけましょう」から「円の為替リスクにも気をつけましょう」についても考えねばならない時代が今後も続くことは確かだ。