先週金曜日のNY市場後場で、NY金が史上最高値を突破。
2,100ドルに接近した。更に、週明けのアジア時間帯では、2,140ドル近辺まで続騰を演じ、その後、さすがに反動の売りに押されている。
とはいえ、本稿執筆時点(午前9時半)では、2,100ドルだ。
その間、円相場は先週金曜日から146円台まで「円高」方向に振れているが、円建て金価格に関しては、NY金急騰の影響のほうが、遥かに強い。
キッカケは、金曜のパウエル発言。
これまでと特段異なる発言内容ではなかったが、市場が勝手な解釈で金買い要因に仕立て上げてしまった。
具体的には、来年利下げを示唆すると行間で読める部分を取り上げ、ドル売り、金買い正当化に使ったのだ。
例えば、「引き締め過ぎと緩め過ぎのリスクはバランスが取れている」というくだり。
パウエル議長は、引き締め継続にも、緩和への転換にもコミットしていないのだが、市場は、パウエル氏が、これまで「来年利下げなど論外」と言ってきたので、少なくとも、利下げの可能性があることを認めた、と解釈した。
パウエル氏にしてみれば、そんな解釈は心外と言いたいところであろう。
しかし、12月12~13日に開催されるFOMCを控え、今週から、FRB高官は公的発言を禁じられる「ブラックアウト期間」に入ったので、何も反論できない。
ここが、投機筋がつけ入るところだ。言ったもの勝ちとでもいえようか。
今朝のアジア時間帯での乱高下は、史上最高値圏で、ここらが売り時と見た投機筋が空売りを増やしていたのだが、逆に、続騰に動いたので、慌てて、買い戻した、所謂、ショートカバーの買いが主体だ。
短期的には、バブル的様相を強める金市場だが、大事なことは、中期的に金価格が上昇トレンドにあることだ。
おそらく、短期的な売買を繰り返しつつ、レンジの下値を切り上げてゆくことになろう。
読者諸兄においては、今の金価格が複合要因で支えられているので、一過性の上げではないということを理解しておく必要があろう。
すなわち、中東・ウクライナの地政学的リスク、来年中には米国の金融政策の緩和への転換、そして国際基軸通貨としての米ドルへの信認低下により、中央銀行が外貨準備として年間金生産量の1/3近くを買い占めるという事実。
この3つの大きな要因が同時進行して、影響も共振しているので、歴史的高値圏が一過性ではない、ということだ。
ちなみに、米国債格下げや「もしトラ」米政治リスクも、今後は強まること必至の情勢だ。
したがって、投機筋が引き起こす短期的乱高下に一喜一憂せず、しっかり上記のトレンドを把握すべき段階である。
週明けアジア時間のNY金暴騰現象に関しては、NEMEXを運営するCMEのHPによれば(↓)日本時間午前10時半時点で、78,180枚の売買がGLOBEX(時間外の電子取引プラットフォーム)を通じて出来高として成立している。
先物ベースで200トン以上の規模の売買が、週明けの日本早朝の時間帯にあったということだ。
これまで空売りに走っていた投機筋がストップロスの買戻しを慌てて入れたことが想定できる。
含み損が急増したので、追加証拠金(マージンコール)を支払わねばならず、やむをえず、損切りの買戻しをせざるを得なかったということだ。
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