注目の10月雇用統計は前月比15万人増。
市場予測の18万人増を下回り、失業率も予想外に3.9%へ悪化。約2年ぶりの高水準である。
雇用数が伸び悩み、失業率が悪化するのは、FRBの引き締め政策の効果と市場は見ている。
更に、平均時給も前年同月比で4.1%上昇と、2021年半ば以降で最も小幅な伸びとなった。
この雇用統計の結果を見る限り、FRBは追加利上げすることもなく、インフレ減速は続くことになりそうだ。
株式市場は、10月雇用統計を歓迎している。


しかし、今、最も注目されていることは、5.25%~5.5%の高水準にある米政策金利が、来年のいつ頃までホールド(維持)されるか、更に、利下げはいつのことか、という点だ。
パウエル氏も、1回の雇用統計がインフレ減速を示唆しても、それは一つのデータポイントに過ぎないと常に説いている。
国際金価格も、雇用統計発表直後は急騰したが、その後、反落して、雇用統計前の水準まで戻っている。
冷静な反応だ。
米債券市場では、10年債利回りが、一時は5%を突破して話題になったが、今や、4.5%まで下がってきた。
これは景況感の悪化による下落と見られる。
先週発表されたISM非製造業指数は51.8と5か月ぶりの低水準。更にISM製造業指数も46.7と、景気拡大・縮小の分岐点となる50を12か月連続で下回った。
ちなみに、雇用統計もISMも全米自動車労働組合(UAW)のストライキによる影響が無視できない面もある。
 


国際金価格に関しては、「忍び寄る不況の影」が下支えになっている。
対照的に、株式市場は、追加利上げ回避できれば、米経済軟着陸も可能と楽観的だ。
来年は不況と見れば金を買い、好況と見れば株を買う、というところだ。
市場には様々な見方が共存するのが普通の姿と心得る。
為替市場では、雇用統計後のドル金利低下を映し、149円台の円高に振れた。(149円で円高とされる時代になったか)。
中期的には、まだドル高の基調に変わりはない。
為替介入が引き続き話題になっているが、もし、筆者が介入担当だったら、雇用統計後にドル安に振れたときに、畳みかけるように、ドル売り・円買い介入するだろうね。
短期的市場の流れに乗った介入のほうが、逆らう介入より、効果があるものだ。