今日は中級者向け。
今、なぜ、金が切り返して上がっているか。
異変は10月6日雇用統計発表後に起きた。
新規就業者数は、市場の事前予測18万人程度を大きく上回り30万人を超すサプライズ。
市場の反応は、11月追加利上げの可能性が強まることで、株価下落、ドル金利上昇。
ところが、その後、株価は反発、ドル金利は伸び悩んだ。
この現象は、当日の市場でも「謎」とされた。
しかし、今になってウォール街の話題になっていることだが、雇用統計発表後に、デイリー・サンフランシスコ地区連銀総裁が、NYエコノミッククラブでの講演で「マーケットでの10年債利回り急騰が話題だが、これは、FRB利上げを民間が先取りして動いてくれた、と理解できる。
FRBは動かずとも、利上げ効果が出ているわけだ」と述べていた。
このデイリー発言の後に、10月9日には、ジェファーソン副議長、ローガン地区連銀総裁が、同様の発言でマーケット主導型の利上げを追認した。
更に10月10日には、ボスティック地区連銀総裁が、「これ以上、利上げの必要なし」とまで言い切った。
市場は市場で虚を突かれた。9月FOMCでのパウエル議長の想定を超えるタカ派姿勢を受け、追加利上げを先取りするかたちで、10年債利回りの水準を切り上げていったところで、FRB側から、あっさり、「我々の仕事をやってくれた」とコメントされたからだ。
そこで、今回のドル金利上昇の争点は、米財政不安による米国債利回り上昇の方向へ移っている。
そもそも、今回のインフレの主因の一つが、バイデン政権のばらまき財政と、その結果としての米国債大量発行にある。
ここは、イエレン財務長官の管轄となり、パウエル議長が出張る筋ではない。
しかし、理由の如何を問わず、インフレが抑制できなければ、FRBがその責めを負わねばならない。
現行の金融引き締め・積極財政というポリシーミックスは経済合理性があるのだが、大統領選を控えた2024年は、金融緩和への転換と積極財政となる可能性が強い。
金には追い風となる中期的展開だ。