レイ・ダリオといえば、世界最大ヘッジファンドの創業者で、米国人投資家のとってはカリスマ的存在だ。
今年正月の日経新聞でも、その存在が、大々的に紹介されていた↓


崩れるドル基軸の世界秩序 レイ・ダリオ氏:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN090IC0Z01C22A2000000/ 


そのカリスマが、昨晩、米国CNBCに生出演して、「金融危機のリスクがある今、金を資産の10~15%程度、保有すべきだ」と明言した。

 

米国CNBC1
米国CNBC2

カリスマを、金保有に動かすほどの、FOMC前夜の金融危機リスクとは何か。
以下に詳説する。(中上級者向け)


タイトル:正解なきFOMC,市場は見切り発車


追加利上げすれば、米国の多くの銀行が巨額保有する米国債の価値は更に下がる。
民間では企業の資金調達コストが更に上がり、商業用不動産向け融資は不良債権化するリスクを孕む。
かくして、米国の銀行不安が再燃しかねない。
とはいえ、追加利上げしなければ、からくも下落傾向は維持してきたインフレがぶり返す恐れがある。
6月FOMCだけでなく7月FOMCも、これまでの利上げがどれほど効いているのか、様子見のため「FOMC動かず」となるかもしれない。
否、「動けない」というほうが妥当か。
FED WATCHでは、7月利上げ確率が7割以上に達しているが、振り返れば、5月FOMC直後には、6月利上げ確率が急上昇していた。この確率の数値は、市場心理に作用され乱高下するので、額面通り受け取りがたい、との定評がNY市場では共有されている。


更に、市場が織り込んでいた年内利下げへの転換に至っては、FOMC内で「論外」と言わんばかりの語り口が目立つ。
結局、8月下旬のジャクソンホール中央銀行フォーラムで、パウエル氏が強弁をふるい利上げ終了・高金利水準維持を告げる展開になるのか。
昨年の同会議では同氏が8分間、利上げ強行継続方針を一気に語り、質疑応答もなく壇上から去った記憶が未だに市場には生々しく残る。
市場が最も警戒するシナリオは、トラウマの呪縛から抜けきれないパウエル氏が政策判断を誤るリスクだ。
そもそも、21年に今回のインフレが顕在化したとき、同氏は「一過性」と頑なに主張した。同11月に、やっと一過性ではないとの見解に転じた。
しかし、22年3月までは、超金融緩和政策を維持した。
その間、インフレというマグマは市場の底で沸々と膨張していた。
インフレ対応が後手に廻ったことで、同氏は、0.75%刻みという大幅利上げを連発した。
しかし、金融政策効果判定には1年から1年半かかるといわれ、今回の6月FOMCでは、インフレ指標を見極めるべしとの意見がFOMC内部でも大勢となった。
とはいえ、7月以降については意見が割れている。
最後に判断するのはパウエル議長だが、この難局に臨み、同氏が再び「痛恨の判断ミス」を犯すことは許されない。
ホワイトハウスからも、景気を悪化させ失業者を増やすことでインフレを抑制する金融政策に対する政治的圧力が強まるは必至だ。


このような危うい市場環境ゆえ、多くのファンドは、利回りが5%を超える短期米国債を保有することで凌いできた。
しかし、債務上限問題が暫時決着したところで、金庫が空になった状態の財務省は、1兆ドルを超える短期債発行を強いられ、米国債市場に新たな乱高下リスクが発覚した。
ここでは、AIブームだろうが、AIバブルだろうが、とりあえず、債券よりは株のほうがマシとの相対的判断が働く。
更に、株も債券も不安なら「金」という選択肢が浮上する。
見切り発車だが、現場のトレーダーは、いつまでもキャッシュ保有で模様眺めという訳にはゆかない。
米国株に偏り過ぎた株式ポートフォリオの国際分散も喫緊の課題ゆえ、日本株買いもFOMC後に加速する可能性がある。
但し、ドル高円安も加速するリスクがあり、植田日銀には海外勢の手荒い洗礼が待ち受ける。


以上


さて、超多忙が続きブログの更新間隔が空いた。
毎年、6月上旬は、年前半を回顧して、年後半を展望するようなイベントなどが多いのだが、今年は特にあれこれ集中してアップアップだったよ。
その間、金価格はFOMC前で大きな動きはなかったので、ブログはスキップ。
利上げもスキップか。