5月FOMCで「利上げ打ち止め」が強く示唆されたが、今や「6月は利上げ1回休んでも、7月に利上げ再開がありうる」との見解が出始めた。
更に、利上げの終着駅であるターミナル・レートは、6%に達する可能性が相次いで公言された。
まず、最近、タカ派発言が目立つカシュカリ・ミネアポリス地区連銀総裁が「インフレ率2%ターゲットを達成するためには、(政策金利を)6%以上に引き上げることも排除しない」と明言した。
更に、ブラード・セントルイス地区連銀総裁が、あと2回利上げすることがインフレ鎮静化のためには必要」と語った。
同氏は6%という数字は明示しなかったが、あと2回利上げならば、政策金利は5%台後半に突入することになる。
米国最大の銀行JPモルガンCEOダイモン氏も、論戦に参加。
足元で3.7%程度の10年債利回りが6~7%まで上昇することに備えよ、と檄を飛ばした。
更に、23日の米国債入札で、超短期証券(期間21日のキャッシュ・マネジメント・ビル=CMB)の落札利回りが遂に6.2%をつけた。
これは、明らかに6月初旬がXデーとされる米債務上限の期限の影響である。
ちなみに、理由の如何を問わず、投資家は超短期証券ながら、年率6.2%の利回りを得たことになる。
かくして、ドル金利6%情報が、様々な形で市場に流れている。
政策金利6%説は、カシュカリ氏が今年はFOMCで投票権を持つとはいえ、まだ、少数派だ。
24日に発表された5月FOMC議事録では、追加利上げを巡り意見が分かれていたことが判明した。
既に、グールズビー・シカゴ地区連銀総裁は、5月利上げが、際どい判定であった、と明かしていたところだ。
同じ24日にはウォラーFRB理事が、「物価上昇率が2%の目標に向かって減速しているという明確な証拠が得られない限り、利上げ停止を支持しない」と語り、FRB内部亀裂を露わにした。
なお、23日に発表された米サービス業PMIは55.1と、好不況の節目とされる50を大きく上回った。
同製造業PMIが48.5と低迷している状況との対比が鮮明だ。
パウエルFRB議長は、かねてから、労働集約的なサービス業の賃金が下がらず、最も頑固なインフレ要因になっていることを危惧していた。
FRBが重視するPCEインフレ率はコアで4.6%まで下落しているが、ここからが胸突き八丁だ。
サービス業由来のインフレを抑え込むためには、やはり利上げの選択肢を残す必要があろう。(なお、4月のPCE(個人消費支出)インフレ率は今週26日に発表される。)
但し、FRBは更なる利上げが地銀危機を悪化させるリスクも考慮せねばならない。
従って、パウエル議長は、極めて危うい綱渡りを強いられる。
市場も極めて神経質になっている。通貨投機筋が荒しやすい地合いともいえる。
6%という数字が市場を独り歩きすると、アルゴリズム取引が6%というキーワードに反応して、機械的にドル買い・円売り注文を連射的に発動しやすくなる。
とはいえ、6%説が少数派である限りは、これ以上の円安基調は限定的だ。
しかし、来る6月FOMCでの議論次第では、145円も視野に入る可能性はある。
昨年150円超まで円売り攻撃を連発した国際通貨投機筋が、今年はおとなしかったが、俄然、円を再び売りの標的に投機的に動く姿勢が垣間見えるからだ。
植田日銀にも、海外から手荒い洗礼が待ち受けている。
なお、昨年とは異なり、ドル高・円安で、NY金価格は1,950ドル台まで下げている。