青学駅伝監督がAT1債を保有していて、大損したとの告白から、一般メディアでも、クレディ・スイス発行のAT1債ってなんだ、という記事が載るようになった。
そもそもAT1債(別名COCO債)とは、リーマンショック時に大手銀行が破綻して結局、納税者のおカネを使った公的救済をせざるを得なかった苦い体験から生み出された投資商品だ。
考え方としては、銀行が破綻したら、まず、株券が紙くずとなり株式保有者が損失を負う。
次に、銀行が発行した社債など債券の保有者が損失を被る。
納税者が、銀行破綻による損失を補填する羽目になることは、極力避けるべしということであった。
ところが、今回のUBSによるクレディ・スイス救済買収(破綻ではない)では、まず、損失を負うべきクレディ・スイス株主が、一定比率で、UBSの株式と交換できることで、かなり損失を免れた。
その代わり、クレディ・スイス発行の社債でAT1債と呼ばれる特殊な債券の保有者は、全損、つまり、保有社債の価値がゼロになってしまった。
これでは、順番が逆だろう、とAT1債保有者たちが怒りを露わにした。
実は、この特殊債券には、価値がゼロになる場合について、予め、明記されていたのだが、殆どの保有者は、あのクレディ・スイスが無くなるということなど想像だにしていなかった。
それでも債券保有者の怒りは収まらない。
今後、集団訴訟なども考えられるが、残念ながら後の祭りとなろう。
そもそも、AT1債が爆発的に売れたのは、通常の社債より利回りが高かったからだ。
たとえば、クレディ・スイスのAT1債は一例だが年率9.5%の高リターンであった。
しかし、ハイリターンなら当然ハイリスク。
旨い話には裏がある。
AT1債の場合には、発行体が破綻などで無くなれば、順番として普通の社債保有者より先に損失を被るのだ。
とはいえ、通常は、最初に損失を被るのは株主であり、債券保有者はその次となる。
この順番が、クレディ・スイスの場合は逆になったので、機関投資家の一部でさえ全損処理(まるごと大損)を強いられた。
なお、欧州や日本の大手銀行が競ってAT1債を発行したのには理由がある。
リーマンショックの教訓で、銀行は手厚い自己資本を保有することが決められた。
AT1債は、その自己資本にカウントされるのだ。
大手銀行にとっては、相対的に安い金利で自己資本を増やせる便利な手段となったわけだ。
クレディ・スイスの一件後にも日本のメガ銀行は、AT1債の発行を目論んでいる。
かくして、発行体の銀行と、ゼロ金利時代に運用難に陥っていた投資家の間で、それぞれがメリットを享受できる人気商品となった。
今回は、日本でも三菱UFJモルガン・スタンレー証券が950億円を主として富裕層に販売していた。
そこで有名人の名前が飛び出したわけだ。
この事例は、騙したとか騙されたという話ではない。
儲けたい富裕層の欲と、自己資本を増やしたい大手銀行のニーズが一致したところで、証券会社が販売役となったのだ。
投資家への教訓としては、江戸時代創立の老舗スイス大手金融機関でも、信用が大きく毀損する可能性があるということ。
すこしでも通常より利回りが良ければ、必ず、裏にその理由があること。
なお、ワールドゴールドカウンシルが日本で現物金を購入した人たちの調査を行ったところ、金を買う理由として断トツの一位が「紙くずにならない」という答えであった。
筆者が在任中には毎年、この調査を行ったのだが、毎回、一位は、大差でこの理由であった。
さて、今日の写真は、子犬にデレデレの私(笑)
基本的に猫派なのだが、犬もかわいいねぇ~~
たまたま我が家を訪問してくれたワンちゃんたちにはまりそうだよ。
よく見ると、私に抱かれたワンちゃんが、必死にもがいている感じはあるけど(笑)