今年に入って、NY金価格が1,900ドルを突破する急騰を演じている背景には、米国経済更に米ドルへの不信感があります。
米経済は本格的インフレに見舞われ、米国の中央銀行であるFRBはインフレ退治のために、ドルの金利を急速に引き上げました。
要は、「金融引き締め」で米国景気を悪化させることで、物価を下落させる戦略です。
危ういですね。
FRBの締め付けが厳しくなれば、インフレどころか、重篤な景気後退=デフレになりかねません。
事実、最近の米国経済指標は、不況のシグナルを示す数字が並んでいます。
それでも、不況よりインフレ退治のほうが大事、というのが今のFRBの政策なのです。
下手すれば、不況とインフレの同時進行(スタグフレーション)になりかねません。
このような状況になると、世界の投資家はドルを売り、金を買うようになります。
元々、歴史的には米ドルの価値の裏付けとして金が用いられていたので、米ドルの信用が傷つけば、原点回帰で金を買う動きに出るわけです。
なお、短期的にはドルと金が同時に上がったり下がったりすることもありますが、長期的・歴史的に見れば、米ドルの価値が下がれば、国際金価格は上がり、米ドルが上がれば、金は下がります。
日本人は資産といえば、殆ど、円しか持たない国民でしたが、最近は、虎の子の資産を円だけで持つことのリスクにも目を向けるようになっています。
10年後の日本経済はどうなっているのか、プロでも分かりません。
このような不確実性が高い時代だからこそ、希少価値を持つ実物資産としての金が買われるのです。
一時は仮想通貨のほうが金より有利という考え方が市場を席捲しましたが、その仮想通貨市場が破綻して、結局「やっぱり金だよね」という考え方に戻ってきました。
これは歴史的重みの違いとしか言いようがありません。