18日は日米対照的な市場展開の24時間であった。
日本時間日中は日銀ゼロ回答のサプライズ。
「永遠のハト」と呼ばれた日本の中央銀行が、タカへの変身は容易ではない。
その後、夜の部のNY市場では、いよいよ恐れていた利上げ不況へ突入の兆しが相次いで発表された。
ニューヨーク連銀製造業景況が、前月から21.7ポイントの大幅下落。12月小売り売上高も二か月連続の減少。
卸売物価上昇率の6か月連続伸び幅鈍化も、インフレ頭打ち傾向というより、不況の兆しとの解釈も市場には流れる。
追い討ちをかけるように、ブラード・セントルイス地区連銀総裁は、CPI下落傾向でも、「ダメ押し」追加利上げが、あと1%ほど必要と発言。
インフレはぶりかえす傾向があるので、インフレ抑制の手を緩めることは出来ない。
次回の利上げも0.5%幅、政策金利は5.5%以上が妥当と米経済紙主催のウェビナーで参加者からの質問に答える形で持論を語った。
もとより引き締め過ぎのリスクは覚悟のスタンスを強調している。
1月9日に、このウェビナーに招待されたデイリー・サンフランシスコ地区連銀総裁も、穏健派だが、ターミナルレートは5%~5.25%と明言していた。
メスター・クリーブランド地区連銀総裁も18日に同金利水準まで引き上げ・維持する考えを明らかにしている。日銀とは対照的に、FRBはまだ動く気満々である。
とはいえ、日米両市場の共通点は、市場予測とのギャップが鮮明に出ていること。
日本では市場が一部国内メディア報道にも振り回され、YCC撤廃モードに溢れていたが、結果的に市場の先走りとなった。
米国では、FRB高官が執拗に政策金利5%以上を語るが、市場は年内にも利下げを見込む。18日のNY市場では、10年債利回りが3.4%を割れて続落。
2年債と10年債の逆イールド幅は70bpと拡大傾向が顕著だ。
これほど、あけすけにFRBに反旗を翻し、正面衝突も厭わぬ市場の強硬姿勢も珍しい。
両者の言い分には、ぞれぞれ一理あり、投資家の視点では、官と民、どちらが正しいのか、判断が悩ましい限りだ。
なお、米経済が打たれ強く、アトランタ連銀のGDPナウが18日には3.5%をつけており、インフレ抑え込み、経済は回復の「軟着陸」シナリオも根強い。
ブラード氏も、失業率の記録的低水準や求人件数の記録的高止まりを例に挙げて、5%超の政策金利でも軟着陸は可能とも述べている。
ちなみに、同氏は、中国経済再開や欧州経済回復の事例を挙げ、潜在的インフレ加速要因と位置付けている。
さて、日本市場注目の円相場だが、18日昼の部で、日銀ゼロ回答を受け、131円台と円安に振れたが、夜の部ではドル金利安に引っ張られ128円台の円高となった。
日銀とFRBの狭間で揺れている。
22年には世界の主要中銀の利上げ傾向に対して、日本は周回遅れと言われ、円安が進行した。
しかし、23年に入るや、欧米ではインフレ減速だが、日本は周回遅れで、CPIが上昇している。
円高というより世界的傾向のドル安に同調しているようだ。
株式市場では、昼の部では不動の日銀が買い材料になり、夜の部では、軟着陸を信じたいが信じ切れずFRB高官発言に怯える米株が大きく下げた。
現在のグローバル市場の断面図を見せつけられた感がある。