今日は、難解だが、2023年金市場を左右する重大な問題について。
FRBドル金利予測が正しいのか、マーケットのドル金利予測が正しいのか。


正月明けで模様眺めだったNY市場だったが、6日発表の雇用統計直後からいきなり対決モードに突入。
マーケットでは、FRBに対する反旗が翻った。
その戦場は、政策金利に連動する傾向が強い米2年債市場。利回りが一気に20bp近く急落したのだ。
一日の下げ幅としては異例だ。
NY市場では「2年債市場がブロークン」と表現された。
その後、9日も2年債利回りは4.2%台に沈んだままだ。
そこで、利上げ路線を突っ走る政策金利決定機関のFRBは、間髪入れず一石を投じた。
雇用統計の賃金(平均時給)の上昇率が年4.2%へ鈍化したことを市場が重視したのに対して、政策金利はあくまで5%から5.5%まで引き上げる意図がFRB高官筋から改めて明示された。市場の反乱は徹底して抑え込む構えだ。
そもそも、賃金は最も頑固なインフレ要因ゆえ、1回や2回の統計数字では確認できないとする。
失業率が3.5%と「最大雇用水準」で更に改善したことも、4%半ばまでの悪化による労働市場鎮静化を見込むFRBは、お気に召さないようだ。
更に株価が反騰したことは、0.75%連続利上げの荒療治でも市場環境への引き締め効果が足りないことを露わにした。
異例の利上げ連発により米経済に多少なりともリセッション傾向が強まらないと、金融政策にラグがあるとはいえ、インフレ抑制仕事人FRBとしての面子もたたぬ。
9日にはサンフランシスコ地区連銀デイリー総裁が、米経済紙主催のウェビナーで「我々は、絶対的に、米国経済を減速させねばならない」と断言した。
かつては温和な元ハト派主導格の人物が「絶対的」とは、かなり肩に力が入った発言と見た。
そのうちに、株価が上昇するようでは困る、とでも言いだしかねない口調であった。


FRBが、これほどまでに市場の見解を正面切って否定することは極めて珍しい。
その背景には、やはり2021年の段階で、インフレを一過性と読んだ「痛恨の判断ミス」がトラウマとして残っている。
ほどなく利上げ停止、年後半は利下げを見込む市場と、どちらが正しいのか。
或いは最終的に、両者はどのように折り合いをつけるのか。
それぞれの言い分に理があるだけに、マーケットも「FRBを疑え派」と「FRBには逆らうな派」ば真っ二つに割れている。
場合によっては、この論戦が、年央まで続く可能性も否定できない。
まずは、今週12日発表の米CPIに注目が集まる。
概ね年率6%台への下落を見込むが、「下落せずのサプライズ」にも市場は身構えている。
今後のCPI下落トレンドだが、年率5%(コアで年率4%)から2%への下げが「胸突き八丁」と筆者は見ている。
NY金市場は、利上げ不況によりFRBが年内にも利下げに転換する可能性を視野に1,800ドル台後半の高い水準で推移している。
昨年から引き続き不況のシグナルとされる逆イールド現象も、金には追い風だ。
株式市場は悲観論に溢れ、マネーが米国債と金に流入中だ。
NY金の地合いはresilient (打たれ強く、しぶとい)。
円相場のほうは、やや膠着気味である。