注目の12月FOMCが終了。
声明文、最新FRB経済レポートが発表され、パウエル議長記者会見が開催された。
13日に発表されたCPIが、年率7.1%まで下落したので、市場では、FRBから、これまでよりハト派的見通しが語られるとの楽観論もあった。
市場が見る将来の政策金利予測も、5%の大台を下回っていた。
ところが、パウエル氏の発言は一貫してタカ派的であった。
利上げ路線に変化はない(stay the course)、と明言。
市場に淡い期待が残っていた、2023年には利下げの可能性も、まだ引き締めが十分ではない、と一蹴。


FOMC参加者による将来の金利見通しも、前回(9月)は、22年末で4.375%が中央値であったが、今回は23年末で5.125%が10名、5.375%が5名、5.625%が2名と5%の大台を上回った。
なお、4.875%と書き入れたハト派が2名いた。
パウエル議長は、「高く、長く」と常に語っており、5%超の高金利水準が23年いっぱい続くと見られる。
「インフレは抑制の手を緩めるとぶり返す」との認識がFOMC内では共有されており、インフレを根絶やしにするためには、政策金利を長く留め置くことが肝要ということなのだ。
インフレがピークアウトとの見解については、家賃が、契約更新の際に、現状の高い水準に変更される事例をパウエル議長は語った。
賃金については、労働者が離職すると戻ってこず、新たな人員確保も難しく、結局レイオフできない事例が顕著ゆえ、下がりにくいとも述べた。
スタグフレーションに関しては、まずは、インフレ抑制を優先すると述べ、景気後退覚悟の姿勢を明確に打ち出した。


なお、0.75%ジャンボ利上げを4回続けても、株価が上がるようでは、市場環境の引き締めが十分とは言えない、との見解もある。
そこで、経済に冷や水を浴びせることでインフレを鎮静化するとの発想のなかで、株高はインフレ要因となるとの議論も根強いが、パウエル議長は回答を避けた。
市場の反応だが、既にNY市場はクリスマスも近く、休暇モード入りで、市場参加者は減りつつある。
FOMCの結果を受けて、まず動くのは超短期売買を繰り返すアルゴ系ファンドなどに限定される。
それゆえ、株安・ドル安の反応も強くはなかった。


注目は、2023年相場への影響だ。
カレンダーの関係で、22年のクリスマス後も27日から30日まで欧米市場はオープンしている。
未だ22年だが、実質的には市場のセンチメントが23年新年相場入りと言う展開になろう。
今年円売りを仕掛け、円安を主導したニューヨークの投機筋も、12月最終週から、新たに動き出す可能性もある。
2023年は5%超の金利水準が続くと見れば、再び円売りに動くシナリオも見逃がせない。
欧米市場での円安で、おとそ気分も吹っ飛ぶ可能性を秘める。


なお、筆者の懸念はQT(量的引き締め)だ。
毎月、950億ドルを上限に、粛々とFRB保有債券を減らしてゆくので「オートパイロット(自動操縦)」と言われるが、既に、短期金融市場では流動性不足の兆しも見られる。
今週、FOMCとほぼ同じ程度の注目度を浴びた仮想通貨FTX社破綻、同社CEO破綻の件も、マネー収縮時代を告げる事例と受け止められている。
今後、簿外取引、シャドーバンク、プライベートエクイティにも波及しそうだ。
市場の安定も重視する立場のFRBが、金融正常化の過程でQTのペースを見直す可能性はないのか。
パウエル議長はQTに関しては「オートパイロット」と繰り返すばかりで、多くを語りたがらない。
それゆえ、市場も神経質になっている。


金価格に関しては、仮に5%金利が続くとすれば、金利を生まない金に短期的には逆風になるが、政策金利5%超えともなれば、2023年米国経済不況入りは必至だ。
既に、NY市場では、2023年米国経済不況入りの確率が70%とされている。
どの程度の不況になるか、深いか、浅いか、については議論が分かれるが、安全資産としての金の出番は増えよう。
既に、米国メディアでも金投資に関する記事・番組が増えてきた。
今年はドル建て金価格が弱含みであったので、潮目の変化を感じる。


なお、YouTube豊島逸夫チャンネルの「2022年相場フィナーレ、パート2、FOMC総括ライブ」を配信した


https://www.youtube.com/watch?v=L1zdfZ3BdMY&list=RDCMUCBRes-CRgMdMM0s2Rlu605Q&start_radio=1