いやはや、国際金市場は先物投機筋主導の荒い展開になってきた。

昨晩は一気に1970ドル台まで暴落。(KITCOグラフ、緑線)
2000ドルを大きく突破したので、「暴落」と書いたが、それでも2000ドル近くの超高値圏にある。
特に大きな材料はなく、利益確定売りに尽きる。原油も売られた。
昨年も、2000ドル以上は、利益確定売り主導の荒い展開となったことを思い出す。
但し、今年はインフレという、金には強い追い風も吹く。ここが昨年と決定的に異なる。
有事の金買いだけなら、これで、下げ方向に転換となるが、今年は、複合要因ゆえ、市場環境が異なる。
それでも、2000ドル以上を値固めするのは、容易ではないことを、昨晩の急落は示している。


史上最高値圏ということは、現在金を購入保有している人たちは皆儲かっているはずだ。利益確定売りが先行しても不思議はない。特に、日本を含め、アジア・中東の現物市場は、売り一色だ。それでも、先物買い主導で上がってきたわけだ。
しかも、円安なので、円建て金価格の上げには拍車がかかる。

次の一手として、市場が注目するのは、今晩発表の米国消費者物価上昇率。事前予測では、年率8%前後の数字が出そう。40年ぶりのインフレは続く。

そして、来週はFOMC。
超緩和から引き締めへの歴史的金融政策転換が、まず決まるであろう。そこで利上げ回数の議論がやはり注目される。ここは、金2000ドル台維持に関して重要なハードルとなろう。

筆者は、短期的にこのままズルズル下がるとは思わないが、年末は今の価格水準より低い水準を想定している。5-6回利上げ連発され、更に、年内にはコロナもウクライナも一服するとの前提で、1800ドル程度を見ている。

インフレに関しては、年内に生産流通制約によるインフレは一服するが、2023年以降、需要サイドで、過剰流動性の後遺症は残り通貨価値希薄化に由来するインフレが顕在化する可能性がある。

それゆえ、長期的には3000ドルに向かっているとの見解は変わっていない。取材されると、短期の見通しばかり書かれ、長期見通しは書かれない傾向がある。しかし、長期見通しのほうが一般読者には重要だ。生産量がピークアウトすることは確実。更に中国人やインド人が金を嫌いにならない限り、現物需要が絶えることはない。長期的に途方もない規模に膨らんだ世界的債務の実態を見るに、実物資産の重要性が際立つのだ。