利上げ7回とか一気に金利を0.5%刻みで上げられては、金利を生まない金にはツライ。
そこで、それらの説を纏めて検証してみた。
FOMCパウエル記者会見後、欧米大手金融機関が相次いで利上げ予測を引き上げている。
特にバンク・オブ・アメリカのエコノミスト、イーサン・ハリス氏は年内7回利上げ説を唱えている。
極論の如く見えるが、同氏がテレビ生出演で語るのを聞くと、絵空事と切捨てることは出来ないと感じる。
「まず、3月と5月に利上げしたうえで、後は、FOMC会合ごとに点検して利上げするか否かを決めればよい。
FRBは既に対応が後手に回っているので、インフレの根強さと労働市場の逼迫を考慮すれば、結局、年内は毎回利上げということになろう。
四半期に1回では、FRBが出遅れた分を取り戻すのは、到底無理だ。」と語る。
同氏の人柄は極めて温厚で、話しぶりも落ち着いているので、傾聴に値する。
次に、ゴールドマン・サックスは、3月、5月と連続利上げ後、6月にQT開始。
7月と9月に再び連続利上げの後、10-12月期は通常の四半期に1回の利上げペースに戻す、と予測している。
その理由としては、FRB首脳陣がアグレシッブな引き締めを許容する姿勢を明確にしていることを挙げる。
更に、先週末から、FOMC参加者の地区連銀総裁からも発言が出始めた。
まず、ボスティック・アトランタ連銀総裁がフィナンシャルタイムズとのインタビューに応じ、ベース・シナリオは利上げ3回だが、データ次第では、年内7回連続利上げや、利上げ幅0.5%刻みもあり得ると語った。
「形だけFOMC会合を開催して、何も実行しないのでは、私は良しとしない。」とも述べている。
なお、FOMC後の異常な株価変動については、緩和縮小から引き締めに移行する時期ゆえ、そのような市場反応は当然で、合理的かつ適切といえる、と語っている。
利上げが景気後退を招くリスクについては、現在の金融政策が、依然緩和的であり、緩和度を引き下げている段階で、まだ、引き締めには至らないことを強調した。政策対応の余地があることを示したと見られる。
なお、同氏はFOMC内でタカ派である。
同じタカ派のジョージ・カンザスシティ地区連銀総裁は、積極的資産圧縮で利上げペースは穏やかに済むとも語っている。
ではハト派はどう見るのか。
FRB副議長職を巡りブレイナード氏の対抗馬と見做された、ハト派代表格のデイリー・サンフランシスコ連銀総裁は「たしかに3月利上げに備えている。しかし、その後は、データを見てから判断したい。まずはオミクロンがどうなるか見ようではないか。」と、かなり抑え気味の発言だ。
同じくハト派のバーキン・リッチモンド連銀総裁は、テレビ出演で、利上げ回数やQTについて特に言及しなかった。
未だハト派とタカ派の間には相当の温度差があるようだ。
パウエル議長のタカ派的発言に対しての異論が、1月FOMC議事録で明らかになる可能性がある。
前回12月のFOMC議事要旨では、想定以上のタカ派よりの姿勢がサプライズとなり、日経平均が844円急落した経緯もある。
温度差は、FOMCと民間要人・エコノミストの間にも顕著だ。
総じて、FRBがインフレ対策に於いて後手に回っている(ビハンド・ザ・カーブ)との批判が民間には多かった。
米国を代表するバンカーであるダイモンJPモルガン・チェースCEOは1月半ばに「年内6回以上の利上げでさえ可能性がある」と述べた。但し、その時点での市場の反応は、同氏が時折舌禍事件を引き起こすので「またか」という程度であった。
それゆえ、1月FOMC後の記者会見でのパウエル発言が「ついにFRBも後手に回っていることを認めたか」と受け止められ、民間の利上げ観測が相次いで前のめり気味に修正されたわけだ。
「我が意を得たり」とばかりに一見過激とも思えるような利上げ観測が市場には噴出することになった。
FOMC後、1週間で、これほど利上げに関する見解が変化して、なお、温度差も顕著である。未だ、紆余曲折ありと見るのが妥当であろう。
市場は当初のパニック的大変動から、今週はさすがに一服気味である。
さて、昨日、気晴らしに散歩していたら、サギや鵜のコロニー発見。
都内で珍しい光景。