ウクライナ緊迫化に反応して、国際金価格もやっと1,850ドルの上値抵抗線に達した。(KITCOグラフ、緑線)。

 

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インフレ懸念と地政学的リスクの共振で金価格上昇力に勢いがついた。
本来なら1,900ドルでも不思議はないところだが、今回は、利上げを伴うため、2020年の2,000ドル超え史上最高値達成のときに比し、上げが抑制されている。
それでも、1,850ドルを達成したことで、安全資産としての面目は保った。
なお、今回も相変わらず「ウクライナ開戦で有事の金買い」などの煽り気味のセールストークみたいなコメントも見られる。
この「有事の金」にはご用心。実際に有事になれば、平時に買い増されていた金を売って凌ぐことが「有事の金」の本当の意味だ。
例えばイラク戦争開戦直後には金価格が急落している。
イラク開戦の噂で買って、開戦のニュースで売る、という投機筋の常套手段であった。


そして、いよいよFOMC, パウエル議長は何を語るか。
25日の米国株式市場も、ダウが一時は800超急落したが、その後、急速に買い戻され、結局66安で終えた。
二日続けて、荒い相場に晒され、リスク回避症候群が市場内にまん延すると、あたかもリスクに対し集団免疫が獲得されたかのような錯覚に陥る。
そのような市場心理が支配するなかで、いよいよ明朝FOMC後のパウエル記者会見が開催される。
市場は身構えるが、具体的に利上げ回数やQTの時期・規模にまで踏み込んで語ることは考えにくい。
3月利上げにしても、まだ、2か月ほど先の事で「コミット」は出来まい。
その間に、雇用統計など重要経済指標の1月、2月分が発表される。
オミクロンに新たな展開も予想される。


更に筆者の注目は、バイデン政権の看板政策を盛り込んだ200兆円規模の財政支出案が、一人の造反議員により、暗礁に乗り上げていることだ。
このままでは、金融政策引き締め・財政政策縮小という縮小均衡のポリシーミックスになってしまう。
バイデン氏は、予算案を分割して、合意できる部分から議会を通す作戦のようだ。
規模が大きい予算案ゆえ、個人消費・インフレ率などに影響を与えるので、3月まで要経過観察が必要だ。
最後は、「データ次第」との姿勢は今も変わらない。
市場を混乱させることは、極力避ける方針ゆえ、政策変更があれば、機敏に市場へ伝えることにはコミットするであろう。
更に、パウエル氏が記者会見で語らなかったことが、後日公表されるFOMC議事要旨で明らかになる可能性にも留意が必要だ。
前回の議事要旨で想定を超すFOMCタカ派スタンスが確認され、市場にはサプライズとなった経緯もある。
パウエル議長がFOMC内のハト派であるサンフランシスコ連銀デイリー総裁やミネアポリス連銀カシュカリ総裁などハト派のFOMC参加者を、ごっそりタカ派陣営に取り込んでしまったのだ。
FRB議長人事の議会承認のための公聴会でも、議員との質疑応答から、各議員と丁寧に根回し工作をしていたことが判然とした。
「全てのFOMC会合がライブだ」「リアルタイムで金融政策を運営する」などのパウエル発言語録を見るに、今回も、機動的に決めてゆくことになろう。