松山選手がハワイの米国ゴルフツアー競技で優勝した。その勝ちっぷりは、まさに「相場師」。
攻めるところは徹底的に攻め、引くところは、無理しない。
最終日は、松山と米国人プロの一騎打ちの様相となった。
前半は、米国人プロが手がつけられないほどの絶好調。
松山も好調なスコアなのだが、前半戦が終わった段階で、5打リードされた。ゴルフで5打差がつき、後半の9ホールを迎えると、圧倒的に一位が優位だ。
しかし、最終日の後半は、サンデーバックナインと言われるのだが、勝負の最終局面なので、一位の選手は二位に追われる緊張感を背負う。
前半は絶好調だった米国人プロも、後半に入るや、急に打球がぶれだした。
一位と二位の差が5打から、徐々に狭まってゆく。
この局面で、松山は徹底的にアグレッシブな攻撃的ゴルフを見せた。
とにかく相手より先に飛ばし、先手を取り、相手を威嚇するゴルフだ。
少しでも先を目指せば、当然、球筋に僅かな狂いが生じるだけで、OB(ボールが規定区域外に飛び出し、ペナルティーを課される)リスクがある。
ここの判断は、投資と同じ。ハイリスク・ハイリターンかローリスク・ローリターンか。
敢えて距離を抑える安全策も選択肢に入る。
ゴルフの場合はOBリスクに対して、どの程度、飛距離などのアドバンテージを得られるか、選手は計算して臨む。
日曜午後の最終9ホールで、松山はハイリスク・ハイリターンに徹し、相手は、その気迫に飲み込まれた感じであった。
しかも、有観客で、多くが日系人なので、相手の米国人プレーヤーは米国内なのにアウェイ状態であった。(ちなみにマスク無しの人も少なくなかったところは米国流)。
そして、ゴルフも投資も勝つには「運」も必要。
試合は延長戦「プレイオフ」に持ち込まれたのだが、そこで、松山の「神ショット」が飛び出した。
残り250メートル先の小さな穴に向けて、意図的にサイドスピンをかけ、左から右にスライス気味に打った打球は、なんとホールの80センチ傍に落下。
その場にいた観客の多くは、遠くの松山選手が打った直後、夕方近くの太陽光のなかで、ボールを見失った。
その直後、一個のゴルフボールが、空から降ってきて、ドーンとホール際で止まった。
松山も逆光でボールを見失い、思わずキャディーのほうを向いてボールの行方を聞いた。
遥か先で大歓声が上がったので、ナイスショットであることを感じ取った。
土壇場での超美打を、現地解説者は、「beauty!」美しい!と叫んでいた。
テレビの画面では、標的に向かって飛ぶ打球の美しい長距離スライス弾道が映った。


と、まぁ、ワールド・ゴルフ・カウンシルの二つ名を持つ筆者も大興奮したわけだが(笑)松山選手は、相場のプロにもなれる側面を見せたのだ。
彼は長いスランプの時期も経験した。
ときとして消極的とも見えるプレーが目立ったときもある。
プロのトレーダーも同じ。流れに乗れず、もがく時期のほうが、おそらく長いはず。
流れが自分に向かってきたとき(勝負の女神が微笑んでくれたとき)、逃さず流れに乗り勝ちまくる。
その間、なにやってもダメな時期もある。
そこを堪え、心理的に潰れずに、いかに乗り切るか。
筆者の金相場のプロとしての生涯成績は、平均で8勝7敗だ。
それでも勝ち越しを続けることが如何に難しいことか。
2連敗すれば3連勝しないと勝ち越せない。
筆者のトレーダー時代は、とにかくリスクを取れと銀行から指示された。
今は、行内のリスク管理が厳しくなり、リスクをとるな、アービトラージ(裁定取引)に徹せよ、と規制される。
割り切ってしまえば今のほうが楽だが、筆者は、リスクをいやというほど取らされたことでプロのトレーダーとして育ったと感じている。
コンプライアンスにがんじがらめの状況は、正直つまらないと筆者は個人的に感じる。
但し、堅気の素人衆には、先物取引など過度なリスクテイクを絶対に薦めない。
地味でも、積み立てに徹しろと説い続けている。


ところで、話は飛ぶが、トンガ大噴火で、世界的なサプライチェーンや気候に新たな変動が出そう。
日本でもコロナに加えて大地震リスクが無視できず。
金の世界では、現物の金塊を自宅の家庭用金庫に保管するリスクが改めて見直されている。