筆者の知り合いの日銀・財務省出身者たちが、ひとたび退官して一個人投資家になるや、やたらに金を買いたがる傾向は、相変わらず続いている。
加速していると言っても過言ではない。
量的緩和の現場に長く居ると、一万円札がただのペーパーとしか見えなくなるものだ。
まさに通貨価値の希薄化を現場で痛感してきた人たちが、虎の子の退職金で金を買いたがり、筆者のところに相談に来る。
40年間、円という通貨の番人をやってきた人たちの行動ゆえ、筆者は背筋がヒンヤリする。
更に財務省OBたちは、自ら日本国の財務諸表を作成してきたが、日本の公的赤字はもはや危機的ゾーンを超えたという。
2021年には現役財務省トップが文芸春秋に寄稿して話題となった。
そういう背景があり、やはり虎の子の退職金で金を買いたがる傾向が見られるのだ。
「円やドルはいくらでも刷れる。なにか刷れない資産はないものか、模索して、金に辿り着いた」。
日本経済の裏表を知る立場にいた人たちだけに、説得力がある。
実は、FRB議長にも似たような事例がある。
FRB議長18年間という最長在任記録を持つグリーンスパン氏。
退官後、講演料は一席10万ドルと言われた。
その彼が、あるヘッジファンド主催の国際会議で講演後、事務局から講演料支払いについて、米ドル・ユーロ・ポンド・人民元・円、どの通貨で振り込めばよいか尋ねたところ、ボソリと「ゴールド」と言ったというエピソードがある。
半分ジョークにせよ、その発想は、日米共通と思われる。
さて、パウエルさんは、在任中に投資信託売却について責められたが、退官後に、彼も金を購入したくなるような状況になるのか。
かなり怖い話題ではある。