目下市場の最もホットな話題は日経平均3万円まで急騰した日本株。
今日は、さすがに利益確定売りで反落したが、このトピックについての筆者の原稿を以下二つ。
1.3連休明けNY市場、日本株政変ラリーを試す
レイバーデーの週末明けは、例年、NY市場が秋相場入りの時期となる。
本日も既に、日本時間午前中から、アジア時間帯をフォローするアーリーバード(早起き鳥)と呼ばれるトレーダーたちは、活動を開始している。
3連休前の先週金曜日の段階で日本の政変は把握していたものの、連休前ゆえ新たなポジションを作るタイミングではなかった。
そして「留守中」に日経平均は3万円近傍まで急騰した。
このような展開で、外国人投資家は、いきなり3万円を買えるか?
筆者が注目しているのは、インド株がここにきて新高値を更新している事例だ。
ウォール街も注視している。
5月初旬には感染者数が1日40万人を突破していたが、現在は4万人程度まで急速に減少している。
4-6月期のGDPも前年同期比20%増と発表された。
そこで、インドの個人投資家による小型株買いからインド株ラリーが始まった。
そこに、外国人投資家も参入して、外国人のインド株ポジションは買い越しに転じた。
買いの対象銘柄も多岐に亘る。
ワクチン接種期待が徐々に高まり、コロナとの共生社会を先買いする動きが拡大中だ。
NY市場のファンドの間でもインド株の動きは注目され、米国株に高値警戒感を抱く投資家による国際分散投資の新たな対象国になりつつある。
そこに、思わぬところ、つまり、日本で政局が動き、期待感が芽生えた。
インド株同様に過剰流動性相場という市場環境で、出遅れ株として物色されても不思議はない状況だ。
日本の感染状況は、まだ予断を許さないが、当面、減少傾向に転じた。
支持率低迷していた首相が退陣する。
次の首相に誰がなっても、例えば、デジタル庁関連とか再生可能エネルギー関連のテーマは変わらないのではないか。
いっぽうで、日本経済に対する不安も累積している。
相変わらず「物価が上がらない国」の代表格というレッテルが貼られている。
少子高齢化という人口動態も変わらない。
しかし、国際分散投資という視点では、世界を見渡しても、どの国も問題をかかえている。
結局、運用対象は消去法で決まって行く。
日本株に関しては、そのポテンシャルに対して、運用配分が、あまりにアンダーウエイトであった、との見直しが入っても不思議ではない。
それゆえ、中長期の外国人投資家の間で、日本株は押し目を拾う動きは感じられる。
但し、いきなり日経平均3万円からのエントリー(参加)は、さすがにハードルが高い。
現水準から更に新たな買いのポジションを仕掛けるとすれば、短期運用のヘッジファンドとなろう。
いわゆるトレンドフォロー型で、上げの流れのモメンタムに乗って、こまめに売買を繰り返すファンドである。
政治相場は予測が困難なだけに、ボラティリティは高まりやすい。それだけ売買チャンスが増えるということだ。
彼らにとって日本株ラリーの目先の賞味期限は、あと2週間程度。
9月21日、22日にはFOMCが開催され、8月雇用統計の想定を超す下振れに、パウエル議長が、年内テーパリング発言を修正するか否か注目されているからだ。
ジャクソンホール中央銀行シンポジウム、8月米国雇用統計そして9月FOMCと続く国際市場の流れの中で生じた日本政局異変。
運用難に悩むファンドにとっては、要経過観察のローカルイベントという位置づけだ。
特に短期筋は、買いでも売りでも、いつでも出動できる臨戦態勢で見守っている。
2.外国人投機家、「総裁決定で日本株売り」の思惑も
レイバーデー3連休明けのNY市場は、久しぶりに多くの市場参加者が顔を揃えた。
「まるで新年みたい」とのコメントが市場の雰囲気を表現している。
ズーム会議にも参加した。
日本株政変ラリーについて、誰か言い出すかと見守っていたが、話題はもっぱらビットコイン暴落。
遂に最後まで言及はなかったので、筆者が言い出そうと思った瞬間に、タイムオーバーで打ち切られてしまった。
これがNY市場における日本株認識の実態だ。
それでも、ほんの一部の短期売買型ヘッジファンド(CTA=コモディティ・トレーディング・アドバイザー)は日本株を買い持っているようで、しきりに自民党総裁選挙の日程を確認してくる。
このような情報は、NY市場内では、探すのに苦労するものだ。
しきりに総裁選挙日29日にこだわるので、次期総裁決定で売り、との思惑が透けた。
いわゆる「噂で買ってニュースで売る」という常套手段だ。
オーソドックスな運用をするファンドは、次期首相も決まらず期待先行の相場に対して傍観の姿勢である。
良質な外国人マネーを取り込むのは容易ではない。