金価格が膠着状態なので、「手持ちの金を売って、他の値動きの良い資産に乗り換えたい」との質問を受けるようになった。
筆者のスタンスは変わらない。
金は長期保有するもの。短期的に売買益を求める「金投機」なら、勝手におやりなさい。
それは博打だから私は勧めない。


とはいえ、コロナ禍で、切実に金を売られねばならない事例も見受けられる。
失業、或いは事業に行き詰まり、とにかく現金が必要、という人たちだ。
このケースは、「平時に買い増してきた金を、コロナ有事で、現金化して凌ぐ」わけで、金のリスクヘッジ効果が生きた事例だ。良いも悪いもない。
金も売らねば生活が行き詰まる。最近の金の売り戻しには、このような悲壮な切迫感がつきまとう。
ギリシャ危機のときも、アテネで市民が親の形見の金製品を売り払い、生活必需品のオリーブオイルやパンを買う資金に充当するという悲惨な実例を見てきた。
コロナ禍に関しては、デルタ型が世界的に猛威をふるい、ワクチン接種者の感染が増え、ワクチン神話が崩れつつある。
現金化のために金が売られるケースは増えそうだ。


いっぽうで、コロナ禍で、おカネを貯め、投資を始めた人たちも多い。
この新規参入の人たちは、リスク分散の観点から、金をポートフォリオに組み込むことを当たり前と考える傾向も見受けられる。
これは日米共通の現象だ。
長期金投資もあれば、短期金投機もある。
コロナは金投資家のプロフィールも変えつつある。