野村、三菱、みずほ、次は?欧米市場も注視
まず、明日土曜日朝9時半からの「日経プラス9サタデー」(BSテレ東)の後半にリモート生出演で、アルケゴス問題について語る。
さて、本文。
「アルケゴス関連でジャパニーズ・ネーム(日本社名)が散発的に出てくる。日本市場では、リスクの連鎖に対する警戒感が強まっているのか」
ウオール街からも「魔女探し」の如き問い合わせが舞い込むようになった。
そこで話題になるのが、今回の「アルケゴス銘柄」大量売却処理に関して、なぜ、日本勢が後手に廻ったのか、ということだ。
そもそものキッカケは、米バイアコムCBSの株価が3月22日月曜日には最高値100ドル台であったが、火曜日には91ドル、水曜日には70ドルと急落したことだ。複数の投資判断引き下げと、株式追加公募が、折あしく重なったことが主因とされる。
そして、折あしくアルケゴスの依頼で大手投資銀行が同社株の買いを膨らませていた。
追加担保も捻出できず、もはやこれまでと、買いポジションの強制売り手仕舞いを覚悟したホワン氏は25日木曜日に大手5社をリモート形式の会議に「招待」した。ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ドイツ銀行、クレディ―・スイス、そして「NOMURA」は、その場で、抜け駆けの大量売却は控え、週末に話し合うことについて議論を交わしたとされる。しかし、それは「関連5社の合意」ではなかった。或いは、「合意」と好意的に解釈した可能性もある。日本流なら「護送船団方式」も自然な発想であろう。この「性善説」と「性悪説」の解釈が、最終的には数千億円単位の損失の差となって顕在化したとも思われる。翌金曜日26日に、ゴールドマンサックスは「抜け駆け」とも映るアルケゴス銘柄大量売却を相対大型売買(ブロック・ディール)の形で実行したのだ。モルガン・スタンレーも動いた。しかし、クレディスイスとNOMURAの二社は動かなかった。出し抜かれ、当該株価が急落したので、動くに動けなかったのか。或いは、社内の判断が遅れたのか。インサイダー取引の「前科」がある、いわくつきの元カリスマとの売買に対する、コンプライアンス部門からの異論に営業部門がひるんだのか。本社の了解を得るのに手間取ったのか。
ホームゲームの米系に対し、アウエーの日欧勢が同じ土俵で戦うことの難しさを指摘する同情的意見もある。
かくして様々な見方がウオール街の「交流サイト」でも交錯している。欧米主要経済紙のなかには、電子版記事に読者が書き込む「コメント」欄もある。そこで今回使われた「トータル・リターン・スワップ」という金融商品について記事内容の一部間違いを指摘され訂正するという一幕まであった。とはいえ、その「コメント」欄では、多くのプロたちが「全く知らなかった」と驚愕もしている。
それは、アルケゴスが2つの隠れ蓑を利用したからだ。
一つは、そのスワップを使えば、担保を入れるだけで、レバレッジをかけ匿名売買できること。そして、「ヘッジファンド」から「ファミリーオフィス(自己資産管理会社)」に看板を変えれば、当局への開示義務も回避できること。
業界側の反省点も少なくない。
業界内で問題児扱いされている人物でも、「ライバル社は取引再開したようだ」との情報が流れれば、顧客獲得競争の後塵を拝する事態は回避せねば、との焦りも生じる。その問題児が交渉術にたけていれば、黙ってお互いを競わせる程度のことは想像に難くない。
マクロの市場環境分析には長けている投資銀行のプロたちも、ライバルの動きには疎く「灯台下暗し」の如しであったかもしれない。結果的には、「問題児」にかなりの数の銀行証券会社が振り回されたのだ。この見解を聞いたときには、筆者も自らの体験に照らし、耳が痛かった。
SECなど米金融規制当局も反省しきりのようだ。
「トータル・リターン・スワップ」のリスクについては、10年前に成立したドッド・フランク金融規制法でも規制強化の対象とされていた。しかし、千ページを超す新法ゆえ、手間取り、やっと今年から来年にかけてスワップ規制が実行段階に入る予定であった。その間、トランプ政権の規制緩和が、この遅れを招いたことも指摘される。
市場が気になるのは、日本の事例の如く、感染が意外なところで拡大していないか、ということだ。ここでは、やはりリーマンショックのトラウマが依然残る。サブプライムという商品のリスクが出始めたとき、多くの市場関係者は、「局部的、一時的」な現象と断じた。
今回、NY市場から見れば、地球の裏側で、損害額は一桁小さいが、アルケゴス関連で新たな事例が出始めると、注視せざるを得ないのだ。
大手の損害額に関しても、日々の外電報道合戦のなかで、2社1兆円近くなどの数字が独り歩きしている。
まずはイエレン財務長官率いる「金融監視団」が「実態調査」を行うことが期待され、かつ、市場内では調査結果、そして規制強化が懸念されている。
さて、国際金価格は続騰。KITCO24時間価格チャートの緑色線。1730ドルまで反騰してきた。
但し、明日から欧米市場はイースター休暇入り。例年4月12日とか半ばくらいだが、今年は早い。その結果、4-6月期入りと連休が重なり、そのなかで重要な雇用統計が今晩発表されるという異例の事態になっている。トレーダーは、連休中何があるか分からないので、これまで投機的に売ってきた米国債は買い戻し(ドル長期金利下落1.7%割れ)、金利差要因で買ってきたドルは売り戻し、その結果、金利安・ドル安で金は買われるという状況だ。本当の4-6月期相場は来週火曜日以降から。まずは水入り。