今週の注目、300兆円米国復活案発表、財源は?
3月30日水曜日、バイデン大統領はピッツバーグで経済計画案を発表する予定だ。インフラ投資と教育・子育て関連の二本建てとなる。
まず、インフラ投資は今後10年間で3.2-3.5兆ドル規模となりそうだ。老朽化した道路、橋、鉄道などのリニューアルは超党派で喫緊の課題である。日本と同様に、地元選挙区に具体的恩恵をもたらすので、「党」より「地域」が争点となろう。3兆ドル規模の総額については、共和党の財政均衡派からの反対が根強く、バイデン大統領得意の「議会での寝技」の見せどころとなる。既に、1.9兆ドルコロナ経済対策強行採決で、単独可決できる特例、即ち財政調整法という切り札を使ってしまった。この特例は、適用に制限があり、今回は使えない。更に、議会運営の観点からは、優先順位が今やアジア系ヘイト・クライムとされる銃撃事件をキッカケに沸騰中の銃規制問題にある。1.9兆ドルコロナ対策審議のときは、トランプ前大統領の弾劾審議が優先して、経済対策が遅れた。今回も、バイデン大統領は政策優先順位が悩ましいところだ。
次に、子育て・教育関連では7000億ドル規模の数字が事前予測として流れている。
議会対策として、インフラ投資案と2つに分けるシナリオも考えられる。
市場の関心は、財源だ。
増税か、国債増発か。
米国債の更なる増発に関しては、超低金利による資金調達コストの低減が、イエレン財務長官からも指摘されている。それに呼応するかのように、パウエルFRB議長も先週の議会証言で、経済のディスインフレ構造、低インフレ常態化を力説した。ジャネット・イエレン氏とジェイ・パウエル氏のイニシャルを取り「J-Jコンビ」と言われるが、阿吽の呼吸と見える。とはいえ、既に、連邦債務は21兆ドルに達しており、財政懸念は拭えない。ドル長期金利上昇が「経済の健全な復活」を映す現象から「財政不安による悪い金利上昇」に変異するリスクをはらむ。その「臨界点」は10年債利回りで2%か。
次に、増税案も波乱含みだ。バイデン氏は、選挙中に3兆ドル規模の増税の必要性を語っていた。基本的には、企業と富裕層への増税を念頭に置いている。中間層増税は「あり得ない」。これに対し、共和党は強く反対している。
具体的に挙がっている項目は以下の通り。
トランプ法人税減税のリセットで、現行21%から28%への引き上げ。
米企業の海外収益への課税強化。
富裕層の所得税上限引き上げ。
富裕層の株式売買益へ39%程度課税。
いずれも激しい論戦が予想される。
金への影響は「中長期的に」米国債不安、格下げの可能性が強い上げ要因となろう。要経過観察。