揺れるドル金利、平定役は「日本頼み」の様相も
「コロナ対策で1.9兆ドル、更に報道によればインフラ投資で3兆ドル。これだけの財政投入でインフレにならないのか」
注目のイエレン財務長官とパウエルFRB議長の同時議会証言は、いきなり核心を突く質問から始まった。
パウエル氏の答えは、これまでと変わらず。「ディスインフレ傾向は根強い。インフレになっても一時的。仮になっても、制御の手段はある。」
市場が知りたいことは、どの程度のインフレ率がどの程度の期間持続すれば、制御手段発動(テーパリング)となるのか、ということだ。
この点は依然、視界不良である。FRB流にいえば「データ次第」ということになる。
なお、FOMC内の意見不一致を公然と認める発言も当事者から出始めた。
カプラン・ダラス連銀総裁がテレビ生出演で「私は、ドット・チャート(FOMC参加者による金利予測)で2022年利上げ派4人の中の1人だ。」と認めたのだ。異例の「告白」である。
更に、長期金利上昇抑制のための手段として注目されているツイスト・オペ(短期債売り、長期債買い)については、反対の立場を明らかにしている。
かくして米国債市場には依然不透明感が漂う。
そのなかで米長期金利の安定化要因として「ジャパン・マネーの米国債買い」期待が根強い。
モルガン・スタンレーのマクロ戦略グローバル・ヘッド、マシュー・ホーンバック氏は「2013年のテーパータントラムの時は、日本の商業銀行が外債売却を主導したと見ている。しかし、日本の投資家は米国債から離れられない。今回は、(米国債の)利回りが魅力的なはずだ」との自説を展開している。
日本の会計年度が4月から始まることも指摘される。
日銀が長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%程度に変更したことも注目された。その後の日本の国債市場の実勢、そして4月以降の動きなど、これまでなかった類の質問が筆者にも寄せられている。
日本側の視点では、過剰期待の印象もあるが、米国債の「非投機的で中長期保有してくれる」買い手が、それほどまでに減っているゆえの「良質なジャパンマネー頼み」とも映る。FRBの国債購入にはテーパリング・リスクがつきまとう。日本に次ぐ世界第二の米国債保有国中国では、米ドル離れ傾向が顕著だ。中国人民銀行は、米国債保有を減らし、外貨準備としてドルの代替通貨とされる金の購入を増やしている。
とはいえ、米国債市場の流動性の豊富さは群を抜いている。「安全資産」としての需要も未だに根強い。23日も、欧州でロックダウンなど行動制限が再強化されたので、米国債へのマネー逃避が生じ、10年債利回りも1.62%まで低下した。その実態は「質への逃避」というより「流動性への逃避」である。トレーダーにとって、いつでも売り手・買い手が居るという安心感は捨てがたい。
1.6%台で小康状態とされるが、多数の売り注文と買い注文が交錯しているのだ。
なお、パウエルFRB議長は22日の国際決済銀行でのフォーラムで暗号資産について批判的発言をしている。
「ビットコインなど暗号資産は、価値の裏付けもなく、値動きは投機的で、価値の保存手段としては不適当だ。ドルの代替通貨というより、金の代替役というべきであろう」
ここで、金を引き合いに出しているのだが、パウエル氏までもが、ビットコインと金を同列・同種類に見ていることにフーーム。。。グリーンスパン元FRB議長は、「金こそ究極の価値を持つ」と語ったものだが、その当時、ビットコインなど無かった。でも、彼なら、未だに、考えは変えていないと思う。とはいえ、投資家レベルでは、金とビットコインの間を短期売買で行ったり来たりの人たちが多いことも事実だ。
ちなみに、イエレン財務長官も、パウエル氏と同じく、ビットコイン大嫌い派である。そもそもビットコインは通貨供給役としての中央銀行の存在を無視するものだから当然ではあるが。