今週の注目点、イエレン&パウエル議会での共演

FOMC前にはFRB幹部が公的発言を控えるブラック・アウト期間が設定されているので、今週は月曜から木曜まで、その反動のごとく要人発言が目白押しである。


特に23、24日(火、水曜日)には、議会上下院でパウエルFRB議長とイエレン財務長官(前FRB議長)が証言する。23日には地区連銀総裁の講演も数多く、さながら今注目の金利の世界のスーパーチューズデーとなりそうだ。


以下、今週の予定されている要人発言予定と米国債入札をまとめた。
(日時は全てNY時間)


22日 月曜日
午前9時 国際決済銀行イノベーションサミットにパウエル氏参加
午後1時 サンフランシスコ連銀 デイリー総裁
午後1時半 クラリダFRB副議長
午後7時15分 バウマンFRB理事


23日 火曜日
午前9時 セントルイス連銀 ブラード総裁
午後12時 パウエルFRB議長、イエレン財務長官 下院金融サービス委員会証言
午後1時 米国2年債入札(600億ドル)
午後1時25分 ブレ―ナードFRB理事
午後1時45分 ニューヨーク連銀 ウイリアムズ総裁
午後3時45分 ブレ―ナードFRB理事
午後4時20分 セントルイス連銀 ブラード総裁


24日 水曜日
午前10時 パウエル氏、イエレン氏、上院銀行委員会証言      
午後1時 米5年債入札(610億ドル)
午後1時35分 ニューヨーク連銀 ウイリアムズ総裁
午後3時 サンフランシスコ連銀 デイリー総裁
午後7時 シカゴ連銀 エバンス総裁


25日 木曜日
午前5時半 ニューヨーク連銀 ウイリアムズ総裁
午前10時10分 クラリダFRB副議長
午前10時30分 ニューヨーク連銀 ウイリアムズ総裁
午後1時 米7年債入札(620億ドル)
午後1時 シカゴ連銀 エバンス総裁
午後7時 サンフランシスコ連銀 デイリー総裁

 

 

市場の注目は、長期金利急騰・テーパリングに関する発言に尽きる。


特に、イエレン氏は米国債発行元、パウエル氏は購入者という関係にある元同僚である。イエレン氏が「財政は大胆に Act Big!」と説けば説くほど、市場では経済過熱リスクが意識され、FRBテーパリングの可能性が議論される。パウエル氏がゼロ金利政策継続を維持すれば、イエレン氏の立場では米国債による資金調達コストが低水準に抑えられる。更に、イエレン氏側では、1.9兆ドル規模のコロナ救済財政出動に続き、景気浮揚策として兆ドル単位のインフラ投資案も控えている。これはパウエル氏へのテーパリング圧力を強める。


FOMC内部でもテーパリングに関する意見の相違がドット・チャートにより明らかになっている。先週発表された最新FRB経済予測では2022年利上げ支持派が4名、23年は7名に増えていた。地区連銀総裁講演では、誰が「タカ派」なのか、「魔女狩り」が始まりそうだ。長期金利急騰に対する「火消し」としては、FRBのツイスト・オペ(短期債購入減、長期債購入増)が取り沙汰される。ブレ―ナードFRB理事は長期金利急騰懸念を示唆しており、注目される存在だ。もう一つの案であった民間銀行の国債保有に関する規制緩和は延長されず、19日のNY市場では国債が売られ株価・金価格下落要因となる一幕もあった。


議会証言は、通常数時間にわたり、入れ替わり議員が質問者となる。選挙区向けの演説調質問も多いが、経済通の議員は、鋭くポイントを突いてくる。米経済テレビでも通常の番組を休み、通しで生中継する。市場は、一言でも本音、失言は聞き洩らさず、更に、発言の行間を読む。


なお、株式外為市場も、最近は米国債入札結果に敏感に反応するようになった。前回の7年債入札が不調だったので、ここは要注意である。


期末要因としては、債券価格の減価(利回り急上昇)により、米国年金のリバランスの米国債購入が「安定要因」として期待されている。


更に、日本のGPIF,生保など機関投資家も、新年度に入り、NY市場でも、その債券購入動向が注目されている。


仮に、更なる長期金利上昇により1.8%から2%が視野に入っても、そのプロセスは一直線ではなかろう。米国債市場が短期投機マネーの草刈り場と化した感があるからだ。空売りの際には米国債を借りてくる必要があるのだが、そこでレポ市場が使われている。短期金融市場で資金の貸し手になれば、担保として米国債を入手できるからだ。その結果、レポ市場で貸し出し競争が激化してマイナス金利という異常現象まで起きている。長期金利の変動幅が大きい状態が続きそうだ。