NY金、30ドル急反騰

gold_chart

金国際価格が1690ドル台から1720ドル近傍まで急反騰した。「底打ち」と言いたいところだが、まだ、断定は時期尚早。


ベアー・マーケット・ラリー(短期的弱気相場の中の短期的上昇局面)の様相だ。先安感から先物空売りが増えていたが、昨晩は、投機筋が買い戻しに走った。キッカケは、米10年債利回りが1.5%台で短期的頭打ち傾向となり、ドル高がドル安に転じたこと。


とはいえ、ドル金利高の根は深い。まだ一夜でトレンド転換が起きるほど安定の兆しは見えない。


なお、中国・インドの金実需は、本欄でも繰り返し語ってきたように、安値圏で盛り上がっている。これは例によって下支え要因。

 

さて、注目のドル金利動向を読むカギについて、専門的に詳しく分析した。ややこしいからスルーしても結構です。

 

米国でも短期マイナス金利現象が出来。長期金利変動を読むカギになる。
「米長期金利の乱」のカラクリはNYレポ市場(短期資金市場)にあった。
米10年債利回りの変動が激化しているのは、短期投機筋が米国債の先安(利回りは上昇)を見込み、米国債の空売り攻勢を仕掛けているからだ。9日も、同利回りは1.59%まで上昇後、1.52%まで急落した。これは、空売り筋の手仕舞い買いが起こったためだ。ナスダック4%、金2%急反騰のキッカケにもなった。この短期的国債売買の繰り返しが資産価格のボラティリティーを高めている。


ここで問題は、投機筋が空売りを仕掛けるためには、10年債の現物を借りてきて、売らねばならないことだ。連日、彼らは、10年債現物を求め奔走している。そこで目を付けたのがNYレポ市場。ここでは、短期資金の貸し手が10年債現物を担保として徴求できるのだ。その結果、レポ市場が10年債現物入手の場と化した。こうなると、貸し手の金利引き下げ競争になる。遂には、マイナス金利が発生。年率4%もの金利を払ってでも、担保獲得が優先される事態になった。新規国債入札があれば、マイナス金利幅が0.5%程度に縮小することもあるが、マイナス短期金利傾向は続いている。ヘッジファンドなど投機筋の米国債空売り意欲は依然根強い。特に、数週間以内に対コロナ個人給付金一人1400ドルの小切手がいよいよ国民に行き渡る。消費の高まりは必至だ。更に、バイデン政権第二次財政出動もこれから議論される。インフラ・グリーンエネルギー関連の「大型景気刺激策」は、1.9兆ドル規模の「コロナ救済策」とは別枠で実行される見込みだ。今のNY市場で、長期金利が1.5%程度に落ち着くと考える市場参加者は極めて少ないと言える。まずは次の目途として1.7%から1.8%の数字が挙げられる。


その間に、新発ものの入札も増えるが、レポ市場でのマイナス金利も当面は常態化しそうだ。これがプラス金利に戻れば、金利急騰の勢いが和らぐことを示す先行指標ともなりそうだ。