NY金、1700割れ
昨晩、パウエル発言で国際金価格は一気に1600ドル台に突入しました。このグラフの緑線の14:00のところです。
要は、パウエルFRB議長が、急騰するドル金利に、一定の歯止めをかけるか、金利急騰の火消しするか、が市場の関心事でした。
しかし、パウエルさんはすげなく「注視している。(金利上昇は)経済が回復しているからだ」と語っただけ。専門的な話になりますが、ツイスト・オペ、即ち、短期債を売って長期債を買うという市場介入をするのではないか、との観測もありました。しかし、そのような話は一切出ませんでした。市場は失望。(私に言わせれば、市場が前のめり気味だったということ)。まず10年金利が1.5%の分水嶺を再突破。株価は前日比プラス圏から一気にマイナス圏に沈み、金も全く同じタイミングで1700ドルを割れました。かなり劇的な転換でしたよ。外為市場でも、ドル金利上昇によりドル高=円安。108円視野の展開です。これは円建て金価格には強い下支え要因となります。
結局、パウエルFRB議長は、ドル長期金利上昇を経済回復を示す良い指標と見ているのですね。最新のベージュブック(地区連銀経済報告)でも「今後6-12か月については、殆どの米企業が楽観視している」との記述がありました。
とはいえ、FRBの見解と、市場の見解には温度差が感じられるようになりました。これまでは、「困ったときのパウエル頼み」みたいに、市場はパウエルさんからの助け舟を期待する傾向が強く、「FRBには逆らうな」と言われてきました。パウエルプットとも言われました。でも、これが「FRBを疑え」に変わりつつある印象です。パウエルプットも効かないかも。
市場心理は複雑です。
FRBにはハト派でいてほしい。でも、今の状況では、FRBからハト派発言が相次ぐと、経済が過熱してインフレになるのではないか、との疑念も生まれます。そうなると、金融緩和政策の縮小、引き締めへの転換も視野に入ってきます。これは、新たな現象です。今後はFRBのハト派姿勢が必ずしも市場では歓迎されない可能性があります。頭の中の切り換えが必要でしょう。
なお、株高に対する姿勢が、トランプ氏とバイデン氏では全く異なることも興味深い現象です。トランプ氏は株価を政権の通信簿と重視して、株価が上がれば「やったぜ!」みたいなツイートを発したものです。対してバイデン氏は、ウオール街のお金持ちより中間層を重視。株式市場とは距離を置く姿勢を見せています。この違いは、ジワリ顕在化してゆくでしょう。