ドル金利急騰、中国バブル崩壊懸念を誘発

中国金融監督当局トップによる「海外バブル崩壊に懸念」発言が欧米市場でも注目されている。


2日の記者会見で、銀行保険監督管理委員会主席の郭樹清氏が「海外の金融資産バブルがいつか崩壊するのではないかと非常に心配している」と語ったのだ。


注目点は、まず、発言者が郭樹清氏ということ。金融保険業界では「泣く子も黙る」と言われる銀保監会のトップである。しかも、中国人民銀行の副総裁だが実質的にはナンバーワンと見られている。同氏は204名から成る中央委員会委員で、更に中国人民銀行内の共産党委員会トップ(書記)の座にある。対して易総裁は、172名から成る中央委員会「候補」委員の座に留まる。共産党内の序列は易綱総裁(人民銀行内では副書記)のほうが低いのだ。そもそも易氏は「海亀」と呼ばれる海外留学組だ。行政のトップは郭氏のような国内組のほうがなりやすい。


今回の「バブル発言」に関しても、中央委員会委員の郭氏が、2021年全人代開催3日前に、党の懸念を代弁したと見られている。


しかし、バブル退治という難題の表舞台では、易氏が前面に立たねばならない。中国国内でのバブル破綻を阻止するためには、金融政策の微妙なかじ取りが必要だ。一歩間違えたときスケープゴートにされ、詰め腹を切らされるのは易総裁となる可能性もある。


時あたかも、中国国内では、不動産大手、華夏幸福基業が先月、資金不足により一部融資を延滞していることが判明した。同社はドル建て社債も数十億ドル規模で発行しており、ドル金利急騰とドル高が重荷になっている。格付け会社フィッチは同社発行債券を「限定的デフォルト」へ格下げした。。


同社は、地方融資平台のような存在で、テーマパーク建設のため創立された。その後、遊興施設に隣接する地域で一般住宅建設にも進出。その結果、累積債務が膨張した。それでも昨年までは新発ドル建て社債が順調に消化されていたのだが、今年に入り情勢が急変。今や、市場実勢で元本が1/3程度にまで減価してきた。株価も半減近い下げだ。


とはいえ、グローバルな視点では、中国経済がコロナ後にいち早く立ち直りを見せている。昨年の5中全会では、2035年に向け、中等先進国を目指す長期目標が提示された。そこで、今回の全人代では「成長の速さより発展の質」を重視して、外向きから内向きの姿勢への移行が確認されるであろう。国内の「大循環」と「国際循環」の「双循環」がキーワードになる。海外から技術そしてマネーを呼び込むためには、国内市場の構造改革も不可欠だ。特に国債、社債、地方債の売買を活性化させるため債券市場の整備は急務といえる。シャドーバンク依存からの脱却の過程では、まず、中国人投資家が「債務不履行」の痛みを実感することも避けて通れない。


郭氏の「海外バブル崩壊懸念」発言は、中国国民そして海外の市場参加者への警鐘と言えそうだ。