「銅」に投機マネー注目
12月に入り、ウオール街でも2021年予測が出回る季節になった。
未曽有の規模の対コロナ経済支援政策が生んだ巨額の過剰流動性の受け皿について様々な議論が交わされる。
その中で、選択肢として興味深いのは、銅が挙がっていることだ。
国際指標であるロンドン金属取引所(LME)の銅3か月先物価格は今週に入り7600ドルを超えている。11月25日時点では7300ドルの価格水準だったので、直近での急騰が目立つ。振り返れば、今年3月には4600ドル台まで下がっていた。それが、例えば、ゴールドマンサックスの最新2021年予測では年平均価格が8625ドル。2022年には9175ドル。更に、2022年前半までには史上最高値の10,170ドル(2011年)を突破の「確率が高い」とまで明記されている。
プロの間では、銅金比価が世界の景況感を計る物差しとして注目されるが、金価格は既に今年史上最高値を突破した後、現在は調整局面入りの状況だ。2000ドル突破後、1800ドルの大台攻防という局面にある。
そこで、相対的に銅の割安感のある銅にヘッジファンドなど投機マネーの食指が動くのだ。
そもそも銅は金と異なり典型的な産業用金属だ。中国が最大の需要国でもあり、価格動向が、世界の景気動向を診断する「ドクター・コッパー」と呼ばれる。その中国は最新11月PMIも好調で経済の回復が株式市場でも注目されてきた。更に、先月以来、コロナワクチン開発進展による経済回復期待の波にも乗っている。加えて、外為市場で顕著なドル安基調もコモディティーとしての銅には追い風だ。ドルインデックスは今年前半に100超えの局面もあったが、今や91割れ寸前まで急落している。イエレン財務長官指名による、「ハト派」=ドル安の連想も市場内では意識されている。
中長期的にも銅需要増が見込まれる。EV(電気自動車)はガソリン車に比し2倍超の銅を使うのだ。そこにグリーンエネルギー政策重視のバイデン政権誕生。このタイミングを計ったかのようなゴールドマンサックスの強気見通し発表である。
客観的に見れば、既に価格に織り込まれた材料も多く、相場が過熱化の兆候も見られる。高値圏では増産も予想される。それでも、有り余る投機マネーの視点では、「まだまだ行ける」「ダウ3万突破でも株式市場は更なる上値追いを見込んでいる」と読み、買い継続の姿勢だ。利益確定売りの局面を押し目買いのチャンスと虎視眈々狙う投機筋の読みも透ける。