ウオール街に潜む隠れトランプ支持派の本音
トランプ大統領コロナ感染に関する経過報道が刻々流れ、市場も気になるところだ。しかし、週明けの市場で目立った反応は見られない。ダウ平均先物も時間外取引で若干上昇して始まった。特に円高、金高にも振れていない。
NY市場の人的ネットワークを通じて様々な見解が入ってくるが、総じて、トランプ大統領の容体について真偽を計りかねている。
週末2回開かれた医者団との記者会見は注目されたが、主治医発言の食い違いが問題視された。総じて、一回目は楽観的なトーンに終始したが、批判を受け、二回目では、血中酸素濃度が基準値をかなり下回る94以下となる局面もあったことなど、具体的な数値も明らかにされた。とはいえ、なぜ、一回目に示さなかったのかとの問いに対しては「医療チームの前向きな姿勢を反映した発言で、違う方向に導くごとき情報は控えた。その結果、隠蔽の誹りもあるが、それは必ずしも正しいとはいえない。」と答えた。軍の病院であり主治医といえど軍人だ。医師としての良識との板挟みで、いかにも苦しげな答弁と市場では話題になった。
結局、今後のトランプ大統領の容体次第、ということになる。それは現時点で誰にも分からないことだ。新型コロナウイルスの症状が急変することは知られており、マーケットは臨戦態勢である。
最新の支持率は、各種世論調査で、概ねバイデン候補のリードが広がりつつある傾向だ。
NYウオール街では民主党支持者も多いのだが、本音ベースで聞くと、隠れトランプ支持者も少なくない。株価を政権通信簿として重視してきたトランプ氏のほうが、マーケットと距離を置きクールな姿勢のバイデン氏より「マシ」との判断である。
このままバイデン勝利シナリオでも、トランプ復帰勝利シナリオでも、株高継続との見方も根強い。
パウエル議長が顕在で、インフレ率が2%を超えても、ゼロ金利を2023年以降も継続する「フォワード・ガイダンス」を維持してくれれば、米国債の実質イールドがマイナス状態は続く。投資家は債券より株式を選好する、との読みだ。
バイデン候補のトランプ法人減税リセット方針が株安を誘発するリスクも指摘されるが、民主党の財政大盤振る舞い期待も根強い。足元では、トランプ氏容体とほぼ同等のレベルで、追加財政支援策の議会での進展が注目されている。
先週金曜日のNY市場ダウ平均の動きも、トランプ感染ショックで一時は400ドル超下げていたが、ペロシ下院議長の一言で急激に下げ幅を縮小した。「航空会社は社員の一時帰休を控えてほしい。航空産業への救済策がまとまりかけている。」との発言であった。
マーケットは、ムニューシン財務長官とペロシ下院議長との間の「ホットライン対話継続」に期待する。
ここで万が一、ホワイトハウスのクラスターが財務長官にも及ぶと、これは市場の失望感を醸成しよう。副大統領候補の討論会を控え、ペンス副大統領の感染有無も連日注目されている。
病床のトランプ大統領も、座視しておれず、批判覚悟でリムジンに乗り、病院周辺に集まる支持者に健在ぶりをアピールした。
感染を逆手にとり、自らの「コロナウイルスと戦う」姿を誇示して、愛国心に訴え、同情票を増やすとのしたたかな戦術とも映る。
自身のツイッターにも複数回、ビデオ・メッセージを投稿しているが、頬のあたりが徐々にふっくらしてきたように見えるのは、「ムーン・フェイス」と呼ばれるステロイド投与の影響と見る向きもある。そこまで計算しても不思議ではない「選挙のプロ」なのだ。
禍転じて福となす「奇跡」も絵空事とはいえない。