「金嫌い」のバフェット氏、金投資に動く
米国では1億ドル以上の資産を運用しているファンドは、四半期ごとに保有株式銘柄を米国証券取引委員会に開示せねばならない。その報告書式の名称から13Fと呼ばれる。
四半期末から45日目までに提出するので、今年6月末の運用状況が、8月15日までに明らかになった。NY市場関係者にとって、機関投資家運用の実態を把握できる開示文書だが、45日前の状況なので遅行性はある。
今回は、バフェット氏が、大手金鉱山会社バリック社の株式を16,073,701株保有していることが明らかになった。時価で433,026,000ドルと記されている。前回5月15日発表の3月末時点では同社株保有はゼロであったので、4-6月期に新規購入したとみられる。同期間にNY金先物価格は1600ドル台から1800ドル台まで急騰している。従って、既に過熱気味の金価格に買い向かったわけだ。その後、7月以降、一時は2000ドルを突破。その後、1800ドル台まで急反落後、1900ドル台で推移している。一般論として金鉱株のボラティリティーは金価格より大きい。長期投資論者のバフェット氏ゆえ、未だ保有を続けているであろうが、市場の注目は、どこまで保有するか。金価格2500ドルか3000ドルか。あるいは、長期的な金価格上昇を見込んでの動きか。
なお、金鉱株は金投資と株式投資の二面性を持つ。金鉱株価はマネジメント・スキルなどの評価により、金価格をアンダーパフォームすることもあればオーバーパフォームすることもある。現在のバリック社の株価は年初来リターンが45%ゆえ、金価格をオーバーパフォームしている。
そもそも、バフェット氏は、「金は輝くだけで役立たず、何かを生み出すものではない」と公言して憚らず投資適格とは認めてこなかった。しかしさすがに、バフェット氏も、対コロナの有事対応として正当化されている未曽有の財政支援・金融緩和策の出口を懸念して、ヘッジとしての金を購入したのであろうか。
彼の金相場観は、一般投資家にも影響を与えそうだ。