先週金曜日2月28日に、FRBが「パウエル談話」で利下げ予告したとき、時期は明示しなかったが、市場は3月17-18日の定例FOMCでの決定を前提に受け止めていた。
それが、G7終了を待っていたかの如く、3日NY時間午後12時に、唐突に発表され、午後1時には15分ほどの緊急記者会見が開催された。
市場の初期反応は「歓迎の買い」で、ダウ平均も200超まで急騰した。
しかし、15分ほどの即席会見中に潮目が変わった。株価の本格下げが始まったのだ。金は上げが加速した。
特に株売りを誘発するような発言はなかったが、おりから、NYで二人目の感染者が出て、初の高校休校の事例も報道され、コストコの店舗内棚が空になった写真が市場には流れていた。
マーケットは、FRBが定例FOMCまで2週間も待てないほど事態が切迫していると警戒感を強めた。
株売りの波のキッカケはヘッジファンド。28日の「パウエル談話」で利下げ近しと読み、株買いポジションを積み増していたので、「噂で買ってニュースで売る」の常套手段で利益確定売りに走ったのだ。既に動揺していた市場では、その後、機械的に売りが売りを呼ぶ展開になったのだ。債券市場で米10年債利回りが1%の大台を一時的に割り込んだことも不安感を醸成した。
そして、金は1580ドル台から1640-50水準まで急騰した。金利を生まない金にとって「緊急0.5%利下げ」は強烈な買い要因だ。
記者会見のパウエル発言で、筆者が気になったことは、「コロナウイルス禍がいつまで続くか」との質問に対して「誰にも分らない」と軽く答えたことだ。まさに事実なのだが、金融政策の司令塔FRB議長が緊急利下げ記者会見で発する表現ではない。市場に「暗闇で手探り」の印象を改めて強く与えてしまう。
これで残る追加利下げ機会は0.25%刻みで4回だけになったことも、改めて金融政策の限界を意識させ、不安感を強める。
FRB議長も、記者会見で、金融政策でサプライチェーン修復は望めないことは述べており、財政政策の重要性を「管轄事項ではないがG7で合意されている」と語った。すると、マーケットは「ねじれ議会で財政出動の難しさ」を連想してしまう。スーパーチューズデー当日のことでもある。
それにしても、NY株式市場のボラティリティーは異常だ。
今週に入っても二日で1000ドル以上の変動を3回も見せつけられた。2日月曜のNY寄り付き前、時間外のダウ平均でも1000ドル幅の価格変動が生じているのだ。
3日のダウ平均は結局785ドル安であったが、1000ドルまで届かず、この程度で収まった感も残るほどだ。
出来高も記録的で、AIが支配して、高速度取引が大量の注文を発動する実態は変わらない。
なお、東京市場で気になる要因も浮上している。
日本人入国制限に動く国が増えていることだ。「全国休校」のヘッドラインが市場で独り歩きして、「日本は危ない」との認識が醸成されている。東京オリンピック開催問題が、欧米のトップニュース扱いになる事例も見られる。仮に5月までに終息しても、風評は残る。選手団派遣をためらう国が増えても不思議はない状況だ。株式市場も五輪延期・中止をリスクシナリオとして受け止める時期であろう。その場合、日経平均2万円割れの可能性があるが、ヘッジファンドには、そこが底値で買いのタイミングと待ち構える姿勢も見える。
海外投資家の先物売買に揺れる東京市場ゆえ、ヘッジファンドの仕掛けには注意が必要だ。
そして、これからスーパーチューズデーの開票結果が入ってくる。サンダース勝利だと、アンチ・ウオール街の急進左派ゆえ、株続落は必定。金には更なる上げ要因となろう。
毎晩、エキサイティングな市場でアドレナリン出っぱなし 笑