19日の欧米市場ではドル高が進行。ドルインデックスが100の大台に接近中だ。
但し、ドル高の様相が変わった。
ドル買いの反対取引で売られる通貨が、これまでは専らユーロであった。年初からユーロは対ドルで1.20から1.08まで下げ続けてきた。
市場にはユーロ先安を見込むユーロキャリートレードが出現していた。
ところが、19日は、ユーロが対ドルで僅かながらも反発。
代わりに、円が売りの標的となった。
その背景には欧米市場で顕在化しつつある日本経済への厳しい見方がある。
かなり荒い表現で語られ、日本叩きと言っても過言ではない。
まず、新型肺炎勃発前のGDPマイナス6.3%の数字が独り歩きして、「ショッキング」などの反応を誘発している。
横浜沖クルーズ船の対応も欧米一般メディアから酷評されてきた。
「国内感染拡大国」のレッテルが貼られつつある。
ウォールストリートジャーナルは社説で「消費増税、大失敗」と断じ、FTも社説で「アベノミクス結果出せず。次期首相に難題残す」と論じている。
「ユニクロの主要株主が日銀というエキゾチックな国」という表現も見受けられる。
このような市場を取り巻く環境の中で、円が「安全通貨」から「リスク通貨」へと変質してきた。
NY市場ではヘッジファンドの見切り売りに晒されている。
円安=リスクオンの定説は覆された。
その結果、19日は、ドル一極集中傾向のなかで円独歩安の展開となったのだ。
経済統計を見ても、雇用統計、住宅指標と良い経済統計が続く米国と日本の差が鮮明である。
アップルの業績未達予測の影響も楽観論に掻き消されている。
日本の視点では、このまま円安が進行して、トランプ大統領が大統領選で苦戦を強いられると、「円安批判」も出かねないリスクをはらむ。ユーロ安にたいして、直接的にドラギ前ECB総裁を名指しで非難した事例もある。
米国内ではパウエルFRB議長への利下げ圧力も高まろう。
19日には1月FOMC議事録が発表されたが、コロナウイルスに関する議論が記されていた。
市場は既に利下げを織り込みつつある。それでもドル高トレンドは止まらない。
市場内にはドル買いマグマが蓄積しているようだ。
このドル高円安は、日本の株式市場にとっては朗報だ。
しかし、日本見切り売りの対象に日本株も含まれる可能性を考慮すれば、素直には喜べまい。
膠着していたドル円相場が急転直下、波乱の様相である。
なお、強いドル高にも関わらず、NY金は1,600ドルの大台到達後も買われ続け、7年ぶりの高値をつけている。
これも従来の「市況の法則」に反する現象だ。
安全性を求めて円に流入していたマネーの一部が金にも流入しているのだ。
その結果、円建て金価格はNY金急騰と円急落を受け、40年ぶりの高値を更新中である。