昨晩、ウオールストリートジャーナル紙が、サウジ国営石油会社アラムコIPO候補市場として東証が選択される可能性を報じてから、米投資銀行のジャパンデスクは大騒ぎである。史上最大のIPOは、上場条件の情報開示などがネックとなり棚上げされている間も、アドバイザーとして選ばれていた大手金融機関はアラムコとの緊密な関係維持のため動いてきた。多くの他社も、密に群がるごとく、有利な取り引き条件を提示して、アラムコへの接近を試みてきた。サウジ政府高官と親しい元トランプ陣営高官が、大手投資銀行にリクルートされ、アラムコとの関係を固める事例もあった。

とはいえ、サウジ人記者殺害にムハンマド皇太子が直接関与との疑惑は未だに晴れず、国際的批判は依然強い。サウジ・マネーがクリーンと見られない状況は変わらない。大手金融機関も、国際世論動向に目配りしつつ慎重に営業努力を続けてきた。サウジの脱石油長期戦略は変わるはずもない。ライバル金融機関との競争に出遅れることはだけは、絶対避けねばならない、との緊迫感は継続していた。

日本市場にとっては、棚ぼただが、願ってもないチャンスとなる。
仮に実現すれば、停滞している投資家の株式売買を活性化させる起爆剤となろう。特に、欧米市場で、これまで殆ど無視されてきた日本株へ関心を喚起する有力な機会となることは間違いない。

既に、ウオール街のジャパンデスクでは、急遽羽田へのフライトを予約する動きも見られる。筆者のところにも旧知の親日派の担当者が緊急訪日とのメールが早速舞い込んできた。

まだ報道の真偽は確認できていない。しかし、EU強硬離脱のロンドンと、政情不安の香港が候補から落ちるというストーリーには説得力がある。NYの選択肢は、米国の対テロ法制により、テロ被害者の家族の要請次第で、サウジ資産が凍結されるリスクがあり、実現のハードルが高い。消去法で東証が残るシナリオが現実味を帯びる。

日本市場に、クジラのなかでも大型の新たな一頭が登場するのだろうか。
干天の慈雨への期待は高まる。
なお、アラムコの真意を深読みすると、上場候補となっていたロンドンや香港市場より原油埋蔵量などの情報開示ルールが日本のほうが緩いこと。更に、日本はサウジ原油購入の得意先でもあり、サウジの敵対国イランと日本の関係も視野に、サウジ日本の関係強化の狙いもありそう。なお、サウジ記者殺害にムハンマド皇太子関与の疑いで国際世論の批判強いが、トランプはサウジ支持に廻っている。サウジは米国武器購入の得意先でもある。