私はスイス銀行に入行して外国為替貴金属部に配属され、担当がドル、円、ポンドなどを経て、「無国籍通貨」金の部門に異動になり、あまりに面白くてエキサイティングでついつい長居してしまったわけです。その「金」の部門には銀、プラチナ、パラジウムも含まれ、私は、プラチナ担当の時期が長かったのです。実績も残しました。スイス銀行辞めるときに、銀行からのプレゼントとしてプラチナコイン「ノーブル」を貰ったときには嬉しかったです。銀行側からは、よくプラチナ相場で儲けてくれた、との謝意が込められていました。ディーラーとして、誇り高く思う瞬間でした。生涯の宝物です。プラチナ価格が2000ドルになったって絶対売りませんよ(笑)
それやこれやで、私にはプラチナに対する強い思い入れがあります。プラチナ・ラブですかね(笑)
実は、これ、プロとしては、いけないことなのですよ。
商売物に惚れるな。惚れれば客観的な視点が失われる。ついつい、希望的観測に走り勝ちだ、ということです。上に立つものは、冷静に見る目をもたねばならないのです。
ですから、私は努めて、プラチナを冷ややかに見ようとするのですが、なかなかプラチナ・ラブから抜けきれません。
皮肉なことは、そんな人間が、業界内ではライバル視されるゴールドの専門機関に転職したことでした。私は井の中の蛙みたいと思っているのですが、業界内では、金とプラチナがライバル関係になるとされ、お互いをけなし合うような時期もありました。そのなかで、私は日経の「私の思い出の一品」というコーナーで、件のノーブル・プラチナ・コインを得意げに出し、記事化されたので、あのときは、社内で懲罰委員会に呼ばれそうな雰囲気でしたよ。
未だに、了見が狭いと感じています。
そんなわけで、私のプラチナ観にはバイアスがかかっています(笑)
いずれ、パラジウムと同じように投機マネーがなだれ込み2000ドルくらいになると信じています。プラチナもパラジウムも小さな市場ですよ。そのなかの井の中の蛙たちが大騒ぎしている。私もその一匹!
原油もプラチナもパラジウムも、私は需給など虚しくて見ません。
投機マネーの思惑次第ですから。
日本人は需給で説明できないと納得できず動けない民族ですけどね。
それゆえ、プロの視点では、自分たちが動かせるマーケットという発想が強いのです。
私もNYMEXのフロアートレーダーで働き(後にも先にも日本人では私一人)現場感覚で感じる生の市場を体験しないと分からないことでもあります。今は完全に電算化されてAIやアルゴ全盛なので、この傾向は益々強まると思います。
パラジウム・バブルも、そのような市場環境の激変あればこそ生じた現象なのです。
次はプラチナと信じています。
今日の写真はミッドタウン六本木虎屋の生菓子。なすび餅と宇治の里(求肥)。食べるのが勿体ないくらい。